診療科・部門のご案内

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小児外科

専門分野及び特徴

 当科における小児外科領域の手術件数(全身麻酔下手術)は年間480 ~500例で、頭頸部、胸部、腹部、腎・泌尿器などのさまざまな病気に関する外科的治療を施行しています。また、石川県唯一の総合周産期母子医療センターとして、NICUなどの診療を小児外科医の立場から担当しており、小児科(小児内科・新生児科)、産婦人科、麻酔科、心臓血管外科など関係する各診療科との連携のもと、高度に整備された設備と修練を積んだスタッフとともに小児総合医療センターとしての機能を充分に果たせるよう努めています。
 私たちは、小児の鼠径ヘルニアや急性虫垂炎といった日常的な疾患の治療を安全・確実に実施するとともに、食道~大腸・肛門にいたる小児消化器外科手術では、専門性の高い難治疾患への手術も手がけてきました。特に、ヒルシュスプルング病や直腸肛門奇形(鎖肛)、胆道閉鎖症や胆道拡張症など、消化管の先天奇形や発達障害に起因するさまざまな難疾患の手術治療では、多数の手術症例を積み重ねてきました。また、漏斗胸や肺嚢胞性疾患、食道閉鎖症などの胸部疾患、膀胱尿管逆流症や水腎症、尿道下裂などの腎・泌尿器系疾患の手術について専門的技術レベルをしっかりと堅持しながら手術治療を実施しています。

当院は、金沢大学医学部・大学院大学の主たる臨床研修病院であり、また、日本外科学会・日本小児外科学会の専門医制度認定施設に認定されています。このため、毎年多数の医学部教育実習生を受け入れるとともに、厚生労働省の定める臨床研修医制度の下で、初期臨床研修医および後期研修医の修練の場として、多数例の臨床経験の研鑽のみならず患児やご家族とともに厳しい治療を乗り越え克服する過程の中から、優秀な後進の小児外科医を育成する機能も期待されています。

子どもたちは、心身共に急成長を遂げる大切な時期にあります。私たちは、入院治療や手術に際して、お子さまの成長発達に最大限の配慮を行い、退院後の生活をより豊かなものとするため、身体と心にとって可能な限り低侵襲な手術治療を目指しています。

石川県立中央病院総合母子医療センター小児外科の特徴

1.高度に整備されたNICUと豊富な新生児外科手術経験

 当院の新生児集中治療室(NICU)は、高度な医療を必要とする低出生体重児や新生児に対し、産科・小児科系の各医療機関と連携して一貫した高度専門医療を行なってきました。当施設は、石川県内唯一の総合周産期母子医療センターとして機能しており、ドクターカーやドクターヘリを駆使して新生児の救急搬送に万全を期するとともに、産婦人科・新生児科・小児外科・麻酔科の専門医が密接に連携して、適切な母体・胎児管理から出産後の新生児治療や手術が必要な先天性疾患などにも対応しています。これまで、先天性横隔膜ヘルニア、先天性食道閉鎖症、臍帯ヘルニア、胎便性腹膜炎、先天性小腸閉鎖症など多くの新生児外科手術を施行し、良好な手術成績を収めてきました。

2.救命救急センターと連携した小児救急医療

 当院救急外来(救命救急センター)では、365日24時間体制で小児を含む救急患者を受け入れており、救命救急科の医師が初期対応するとともに、小児系の救急担当医(小児内科・小児外科)が迅速に対応しています。小児の交通事故や熱傷などの受け入れに関しても、適確な初期治療を開始するとともに、専門各科との協力体制のもとで連携しながら、迅速かつ適切な救急治療に取り組んでいます。

3.小児外科疾患における内視鏡外科手術の推進

 腹腔鏡や胸腔鏡と呼ばれる医療用の細径カメラ(3 mm径、5 mm径)を身体内に挿入し、高精細受像機(モニター)に画像を映し出して手術を行う内視鏡外科手術は、術創部の痛みが少ないとともに、手術後の回復が迅速で早期に退院できる、手術創痕が小さくなるなど、手術を受ける方々にとって多くの利点があります。私たちは、お子さまの手術にいち早くこの方法を取り入れて多数の手術を行ってきました。手術の創部は、およそ3 mm ~5 mmの長さで、腹腔鏡や胸腔鏡を用いた内視鏡外科手術は、小児鼠径ヘルニア、急性虫垂炎、漏斗胸、胃食道逆流症、乳児肥厚性幽門狭窄症、ヒルシュスプルング病、鎖肛(直腸肛門奇形)など、多様な手術に導入しています。

4.小児外科疾患に対する安全で高度な手術治療の実践

 当施設は、日本小児外科学会の専門医制度における認定施設として、小児の頸部、胸部、腹部手術では、多くの病気に対する基本に忠実で安全な標準的手術を心がけて実施しています。また、小児がんなど、手術のみならず化学療法(抗がん剤)や放射線療法などが重要な役割を果たす集学的治療が必要となる小児期の病気に関しても専門的治療の経験を積み重ねており、各分野の専門医師で結成された医療チームにおいて、主導的役割を担い治療に取り組んでいます。また、定期的な診療カンファランスを通して、お子さま一人一人に最も適切な治療法を検討した上で診療にあたっています。

5.障がい児の方に対する外科治療の取り組み

 当科では、障がい児の方々の生活の質(QOL)を高め、また、日々のご家族の介護負担を軽減するためにも、小児外科医の立場からお子さまに出来ることを熟慮し、心の通うケア・診療を目指して外科治療を行っています。また、お子さまの発達状況に対応した適切な診療に努め、栄養状態や全身状態の安定・成長のために役立つさまざまな手術(胃瘻造設術、胃食道逆流症防止術、気管切開術、喉頭気管分離手術など)を実施しています。