脳神経内科の紹介
脳神経内科は、内科の他領域(循環器内科など)に比べ、まだ歴史が浅いために、どのような患者さんを扱う科なのか、十分ご理解なされておられない方も多いと思います。そこで、簡単に説明しておきたいと思います。その名の通り、「脳」と「神経」の不調をきたした方を、「内科」的に治療する科です。といっても、十分伝わらない結果、現状があるものと存じますので、もう少し具体的に話します。
まず、「脳」ですが、その不調とは、どのような症状があるのでしょうか?脳の機能を考えてみてください。考えたり、感じたり、覚えたり…など、いろいろありますが、我々は、「心・性格」や「感情」は扱いません。これらは、脳に宿ると考えられますが、これは精神科または精神神経科や心療内科の領域になります。脳の機能のうち、我々の扱うのは、主に「意識」や「認知機能」です。「意識障害」は、脳以外の原因も多く、我々の対象疾患となるのは2-3割といったところですが、認知機能の障害は、「認知症」が代表で、そこに至らなくても失語症(話せないとか言葉がわからない)や物忘れ(覚えられない)、などが対象となってきます。

次に「神経」ですが、神経の障害、もっとわかりやすく言うと神経が麻痺したらどうなるでしょう?手足の麻痺や、感覚が鈍くなるということですね?すなわち、多くの麻痺症状がその対象になります。運動機能では、手足や顔面が動かない、食べたり飲んだりできない、ろれつが回らない、ちゃんと歩けないとか。さらに、麻痺とは逆に過剰に動くと、痙攣やふるえ、ぴくつきなどになって現れます。また、感覚機能では、手足の感覚が鈍い、見にくいとか五感の鈍麻になりますし、過剰に感じるとしびれや痛みといった症状になって現れます。痛みは、臓器障害を脳に伝える大事な神経機能で、神経自体の障害である頻度は少ないのですが、坐骨神経痛や三叉神経痛など、神経特有の痛みを生じる疾患もあります。

こういった症状で悩む方について、その原因を探り、内科的すなわち、お薬を主として使い、治そうとする診療科が、脳神経内科となります。当科が扱う主な疾病としては、脳卒中(脳梗塞や脳出血)、パーキンソン病や関連疾患、髄膜炎、てんかん、ギランバレー症候群や多発神経炎、筋ジストロフィー症など筋疾患とかありますが、脳卒中以外は、多くの方にとっては、あまりなじみのない疾患ではないかと思います。一般の医師も神経領域は詳しくない場合が多いので、前述のような脳神経の不調が疑われる方は、一度おいでください。
具体的な症状としては、「頭痛、めまい、しびれ、ふるえ、運動障害、意識障害・認知症」などを診る内科で、疾患を大きく分類すると以下のようになります。
- 脳血管障害(脳卒中):脳梗塞、脳出血
- 神経感染症:髄膜炎、脳炎
- 機能的疾患:片頭痛、筋緊張性頭痛、めまい、てんかん、不随意運動
- 免疫性疾患:重症筋無力症、筋炎、多発性硬化症
- 代謝性疾患:糖尿病に伴う神経障害、ビタミン欠乏
- 神経変性疾患:パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病
- 遺伝性疾患:脊髄小脳変性症、筋ジストロフィー
脳神経内科に関する詳細な情報は、下記のホームページもぜひご参照ください。
なお、不安障害や不眠、うつなどの精神的な症状については、脳神経内科は専門ではありません。より適切な医療機関(心療内科や神経科・精神科)にご紹介いたします。
脳神経内科を受診される患者さんへのお願い
- 脳神経内科の診察では、ひとりひとりの患者さんに多くの時間を要します。できるだけ待ち時間を短縮できるよう調整しておりますが、予約時間から遅れる場合がありご理解ご協力の程お願い申し上げます。
- 初めて受診される方は、かかりつけ医に紹介状をご依頼ください。また、現在服用中の薬があれば持参ください。
- かかりつけ医や他の病院(近隣の病院や専門病院、大学病院など)とも積極的に連携・協力しています。当科からの紹介も勧めておりますので、担当医・看護師・受付等に遠慮なくご相談ください。
診療内容・特徴
脳神経内科の診療は、医学・医療の最も基本的な診療手順に沿って行われます。それは、1.病歴聴取 2.診察 3.検査を行い診断確定し、4.治療という順序です。
1
病歴聴取
患者さんが困っていることは何か、それがいつから起こって、どのように推移しているのかをまず伺い、他の病気の有無や服薬内容、特有の体質、過去の病気やけが、嗜好品や必要に応じてご家族のことなども聞き取り、これらの情報が病気を考えていく基礎となります。
2
診察
脳神経内科では、初めて診る方については、一般診療科と比較し、より詳細に診察することとなります。神経機能は多岐にわたるため、通常目の動きから始まり、歩行に至るまで細かく診察することで、体や神経機能のどの部分に異常があるのかを明らかにします。また、認知症など、認知機能の異常を明らかにするためには、更に多くの問診も行っていきます。このため、診察だけで短くて5分程度、長いと10分以上要します。病歴聴取も含めますと、かなりの時間を要しますので、一度に多くの患者さんを診られない理由がここにあります。
もちろん、意識障害患者さんや頭痛で苦しんでおられる方など、急を要する方については、優先度を踏まえながら、個々に判断しております。
3
検査
2.診察で具体的な病気や異常部位を想定し、それに応じて必要な検査を受けて頂きます。
当科で行う検査は、一般的な採血・尿、レントゲンや脳画像検査(CT、MRIなど)で、当科特有とまでは言えませんが、他科ではあまり行わない検査としては、髄液検査や脳核医学検査や電気生理検査といったものがあります。
一般の方の中には、「MRI検査を行えば認知症がわかる」など、検査を万能のようにお考えの方もおられますが、検査はあくまで参考資料であり、異常があっても、あまり意味を持たない場合も多いのです。一例をあげれば、高齢者では、MRIを行うと脳の萎縮をみることがしばしばありますが、現実には認知症状と無縁の方も多いですし、これまで脳梗塞などなったこともないのに脳梗塞の痕跡や脳血管の狭窄などがみられた、などといったことです。このような場合は、ほとんど治療対象とはならないので、問診や診察までの情報と合わせて判断していく必要があり、そうしないと誤った治療を選択してしまうことにもなりかねません。問診や診察をおざなりにしては、正確な診断に結びつかず、しいては患者さんに不利益をもたらす結果にもなってしまうのです。
4
治療
脳神経内科の治療は、内科治療、つまりお薬です。対象とする病気によって当然薬は異なりますが、患者さんによってそれほど大きく変わらない病気もあれば、同じ病気でも個別の症状や重症度によって大きく異なるなど、いろいろあります。最も多く扱うことの多い、脳梗塞や脳出血などの急性期や慢性期に行う一般的治療は、患者さんによってそう違わない治療内容です。これに対し、パーキンソン病は、患者さん一人一人の症状、重症度が大きく異なり、家族背景なども含め、個別治療が要求される代表的病気です。認知症に対する治療薬の出現など、日々新たに登場する治療薬に対しても積極的に適応し、必要とする患者さんに対しては、ベストな治療提供ができるよう、務めております。
神経疾患治療のもう一つの柱が、リハビリテーション、略してリハビリです。例えば脳梗塞に後遺症があるように、最善を尽くしても全快に至らない結果になることが多いのも、神経疾患の特徴ではありますが、少しでも神経機能の回復を促すため、疾患の種類によらず、入院された方で、神経機能障害のある方については、早期からリハビリを行って頂いており、内科治療に劣らない治療の柱となっております。リハビリには、理学療法・作業療法・言語療法の3部門があり、四肢機能に異常を呈する場合は、理学療法・作業療法を行い、言語や喉の機能障害(失語や構音・嚥下障害)がある場合には、言語療法が加わります。詳細は省きますが、医師・看護師とともに、リハビリ療法士が、回復のお手伝いをします。ただし、残念ながら外来の患者さんには、リハビリを提供できる体制にはなっておりません。対象者があまりに多くなってしまうためであり、この点はご理解頂きたいところです。
リハビリの効果は、一朝一夕で現れるものではございません。多くの人が若い頃に経験したクラブ活動や習い事と同様、リハビリも時間をかけて回数を重ねることで、その効果が得られます。神経障害のリハビリについても何ら変わりはありませんが、当院ではその効果を見届ける余裕がございません。病気の内容にもよりますが、治療途中にあっても、病状が安定しておりリハビリ主体の治療で支障ないことと、その後の治療方針が明確になっている方については、リハビリを担って頂ける医療施設と連携し、転院して頂き、治療継続をお願いしております。脳梗塞・脳出血など、脳卒中の方で多いのですが、他疾患の方でも同様の状態であれば、お願いしております。
医師紹介
日本内科学会 総合内科専門医
日本神経学会
日本内科学会
日本神経治療学会
日本内科学会 総合内科専門医
日本脳卒中学会 脳卒中専門医
日本神経学会
日本内科学会
日本脳卒中学会
日本てんかん学会
日本内科学会 認定内科医
日本神経学会
日本内科学会
日本内科学会
診療担当表
診察室 | 月曜 | 火曜 | 水曜 | 木曜 | 金曜 | |
---|---|---|---|---|---|---|
午前 | 2A-8 初診 | 山口 | ローテーション | 朝川 | 加賀 | 松本 |
2A-1 | 加賀 | ― | 松本 | 山口 | 朝川 |
3月: | ー |
4月: | ー |
3月: | ー |
4月: | ー |
診療実績
退院患者疾患内訳
外来患者数(人)
入院患者数(人)
救急搬送割合(%)
平均在院日数(日)
tPA実施数
2023年の診療実績(入院患者のみ)
疾病名 | 総数 |
---|---|
脳梗塞 | 162名 |
脳内出血 | 22名 |
てんかん | 18名 |
炎症性多発(性)ニューロパチ<シ>ー | 17名 |
パーキンソン<Parkinson>病 | 13名 |
その他及び詳細不明の原因による髄膜炎 | 11名 |
脊髄性筋萎縮症及び関連症候群 | 9名 |
脳炎、脊髄炎及び脳脊髄炎 | 8名 |
脳動脈の閉塞及び狭窄、脳梗塞に至らなかったもの | 7名 |
一過性脳虚血発作及び関連症候群 | 6名 |
その他 | 154名 |
合計 | 427名 |
2022年の診療実績(入院患者のみ)
疾病名 | 総数 |
---|---|
脳梗塞 | 150名 |
脳内出血 | 30名 |
てんかん | 16名 |
炎症性多発(性)ニューロパチ<シ>ー | 16名 |
脊髄性筋萎縮症および関連症候群 | 14名 |
パーキンソン<Parkinson>病 | 13名 |
けいれん<痙攣>、他に分類されないもの | 5名 |
その他および詳細不明の原因による髄膜炎 | 4名 |
多発性硬化症 | 4名 |
脳のその他の障害 | 4名 |
その他 | 109名 |
合計 | 365名 |
2021年の診療実績(入院患者のみ)
疾病名 | 総数 |
---|---|
脳梗塞 | 142名 |
脳内出血 | 24名 |
てんかん | 19名 |
脳炎、脊髄炎および脳脊髄炎 | 14名 |
パーキンソン<Parkinson>病 | 12名 |
脊髄性筋萎縮症および関連症候群 | 11名 |
その他の急性播種性脱髄疾患 | 8名 |
傾眠、昏迷および昏睡 | 8名 |
脳動脈の閉塞および狭窄、脳梗塞に至らなかったもの | 7名 |
てんかん重積(状態) | 6名 |
その他 | 156名 |
合計 | 407名 |
2020年の診療実績(入院患者のみ)
疾病名 | 総数 |
---|---|
脳梗塞 | 148名 |
脳動脈の閉塞および狭窄、脳梗塞に至らなかったもの | 18名 |
脳内出血 | 17名 |
てんかん | 14名 |
炎症性多発(性)ニューロパチ<シ>ー | 14名 |
脊髄性筋萎縮症および関連症候群 | 12名 |
その他および詳細不明の原因による髄膜炎 | 9名 |
パーキンソン<Parkinson>病 | 8名 |
多発性硬化症 | 7名 |
てんかん重積(状態) | 6名 |
その他 | 147名 |
合計 | 400名 |
2019年の診療実績(入院患者のみ)
疾病名 | 総数 |
---|---|
脳梗塞 | 201名 |
脊髄性筋萎縮症および関連症候群 | 19名 |
パーキンソン<Parkinson>病 | 14名 |
重症筋無力症およびその他の神経筋障害 | 13名 |
脳炎・脊髄炎および脳脊髄炎 | 12名 |
てんかん | 10名 |
炎症性多発(性)ニューロパチ<シ>- | 10名 |
その他および詳細不明の原因による髄膜炎 | 7名 |
ヘルペスウイルス[単純ヘルペス]感染症 | 5名 |
てんかん重積(状態) | 5名 |
その他 | 128名 |
合計 | 424名 |
2018年の診療実績(入院患者のみ)
疾病名 | 総数 |
---|---|
脳梗塞 | 158名 |
てんかん | 19名 |
脊髄性筋萎縮症および関連症候群 | 18名 |
脳炎・脊髄炎および脳脊髄炎 | 13名 |
脳動脈の閉塞および狭窄、脳梗塞に至らなかったもの | 13名 |
多発性硬化症 | 10名 |
炎症性多発(性)ニューロパチ<シ>- | 9名 |
パーキンソン<Parkinson>病 | 8名 |
その他の脊髄疾患 | 7名 |
ヘルペスウイルス[単純ヘルペス]感染症 | 5名 |
その他 | 101名 |
合計 | 361名 |
医療関係者の方へ
当科での診療を必要とされる方がおいでましたら、是非ご紹介ください。その際、画像検査(頭部CTやMRI)が必要であろうと判断される場合には、あらかじめ予約を取って頂けると紹介される患者さんの待ち時間軽減につながりますので、ご一考ください。当院患者総合⽀援センターが、その窓口になって受け付けております。この理由ですが、当院では画像検査の件数が多いため、CTやMRIを当日実施しようとした場合、検査部門で予約の方をこなすだけで精一杯で、その日にできなかったり、また実施できても通常予約の方の後になったりするため、長時間お待ちして頂くこととなったりするのです。もちろん、必要性や緊急性がある方においては、優先的に実施してもらいますが、そのしわ寄せが他の方に行ってしまいますので、なるべくこのような事態が生じないよう、ご協力をお願いします。
返事は、出来るだけ速やかにするよう心がけておりますが、検査を予定したりすると、場合によっては1カ月程度のお時間を頂くこともございますので、ご容赦ください。
パーキンソン病や関連疾患、多発性硬化症や重症筋無力症などの免疫疾患、てんかんの患者さんなど、病状が安定しており、治療内容を調整する必要があまりない方も、当科外来にはたくさんいらっしゃいます。病状が変化したり、治療内容を変えた方がよい状況になったり、患者さんが検査を希望したり、時々病状のチェックをしたりなど、当科での診療を要する場合には、いつでも対応したいと思いますので、一般の先生方にはあまりなじみがない、こういった患者さんにつきましても、かかりつけ医となって頂けるよう、是非ご協力をお願いしたく存じます。
患者さんのご紹介について
患者さんをご紹介いただく際は、お手数ですが紹介状のご協力をお願いします。
- 診療の予約・お問い合わせは、患者総合⽀援センターまでご連絡ください。
- 患者さんには、紹介状・保険証・受給者証等をご持参のうえ、午前8時20分から11時20分の間に、紹介患者受付までお越しいただくようお伝えください。
- 緊急対応が必要な患者さんの場合は、当院代表番号(076-237-8211)までご連絡ください。