診療科・部門のご案内

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遺伝診療科

家族性高コレステロール血症について

家族性高コレステロール血症は,遺伝的にLDLコレステロール(俗に言う悪玉コレステロール)が高くなるため,動脈硬化性疾患(特に心臓)に罹患しやすくなる疾患です.一般の方200〜300人に1人と,最も多い遺伝性疾患のひとつです.
出生時から長期にわたりLDLコレステロール高値が持続するので,特に男性では20〜30歳程度の若さでも心筋梗塞をおこすことが珍しくありません.160-180mg/dL程度のLDLコレステロール高値が心筋梗塞を起こすには20年程度かかるためで,仮に同じ年齢で同じLDLコレステロール値であっても,この点が成人後に生活習慣などからコレステロールが上昇した方と全く違うところです.
家族性高コレステロール血症は遺伝性疾患であり,本人の診断だけでなく,ご家族の早期診断・治療に結びつけることが重要です.当院では長年家族性高コレステロール血症の診療や医師向けのガイドライン作成に携わってきた医師が勤務しており,専門医の診察が受けられます.

どんなことがおこりますか?

代表的な症状は,1)LDLコレステロールの上昇,2)皮膚やアキレス腱黄色腫,3)心筋梗塞などの原因になる冠動脈硬化症です.若くして心筋梗塞になった方を調べると,家族性高コレステロール血症の方が多いことがわかっています.
遺伝性ですので,通常はご両親のいずれかにLDLコレステロール高値を認めますが,まれに突然変異で発症する場合があります.またお子さんが家族性高コレステロール血症となる可能性が50%あります.
ご家族にコレステロールが高い方がいる場合,あるいは狭心症や心筋梗塞の方がいる場合は,家族性高コレステロール血症ではないか,疑ってみることが大切です.

どのように診断されますか?

LDLコレステロールが高値で,アキレス腱などの黄色腫がある場合,もしくは家族に家族性高コレステロール血症と診断された方がいる場合に,家族性高コレステロール血症と診断されます.黄色腫の有無はご自分で判断するのは難しいため,病院で診察・検査を受けていただく必要があります.
また家族性高コレステロール血症は遺伝子検査で診断されることもあります.現在は重症型の家族性高コレステロール血症が疑われる場合は保険で遺伝子検査が可能です.

治療はどうしますか?

LDLコレステロールをしっかり下げることが大切です.また禁煙,高血圧や糖尿病など他の疾患がある場合はそちらの治療も大切です.
生活習慣改善は重要ですが,それだけでLDLコレステロールが十分低下することは家族性高コレステロール血症ではほとんどありません.多くの場合薬物療法(スタチン系薬剤が中心)が必要になりますが,一般的な投与量では不十分で,増量や複数の治療薬併用が必要になることが多く,家族性高コレステロール血症に適応がある新しい薬剤も開発されています.
家族性高コレステロール血症では,一般の高コレステロール血症のつもりで治療すると,動脈硬化性疾患発症リスクを見誤ることになりかねないため,家族性高コレステロール血症のことをよく理解している医師に相談することを勧めます.
無症状であっても動脈硬化症が進行していることが珍しくないので,その検査も必要です.
将来の動脈硬化を予防することが大切なので,日本小児科学会のガイドラインでは,診断が明らかな場合10歳から薬物治療を考慮することになっています.

家族性高コレステロール血症外来について

火曜日(午前)に家族性高コレステロール血症外来を行っています.(担当:野原)
家族性高コレステロール血症が疑われる場合はご相談ください.