診療科・部門・センター
救命救急センター

救命救急センターの紹介

当院は、昭和52年に「救命救急センター」の指定を受け、三次救急医療施設として24時間体制で高度・特殊な設備・技術を要する重篤な救急患者への対応を行っています。石川中央医療圏で唯一の救命救急センターです。救急隊からの救急要請および他院からの転院搬送には可能な限り応需することを基本姿勢としています。

対応する医療圏は金沢市だけでなく、白山市、かほく市、野々市市、津幡町、内灘町も含み、対象人口は約70万人です。また、南加賀医療圏(小松市、加賀市、能美市、川北町)、能登中部医療圏(七尾市、羽咋市、志賀町、宝達志水町、中能登町)、能登北部医療圏(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)からの重症患者の転院搬送も受け入れており、石川県全域の高度な救急医療が必要な患者を受け入れる救命救急センターとなっています。

各診療科の強力な協力体制により、重篤な疾患の初期診療を行い必要に応じて専門科へ診療を引き継ぐER方式と、多発外傷や多臓器不全等の重症患者は救急科で一貫して集中治療を行う集中治療型の二重の診療体制です。救命救急センターで治療が落ち着けば、転棟や転院してリハビリを行い、社会復帰を目指します。急性期治療の後には、院内各科への転科や地域の病院に転院をお願いすることもあります。救命救急センターの空床確保のためにも、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

機能の充実について

  • 救命救急など重症患者の受け入れ強化として、新病院開設にあたってICU・HCUを増床しました。
  • 周術期・集中治療センター(特定集中治療室(ICU)、ハイケアユニット(HCU)、救急集中治療室(ECU))を手術部門に近接して一体的に配置しています。
  • ドクターヘリを導入しています。
  • 屋上にヘリポートを設置し、直通エレベーターにより、患者を1階の救命救急センターや手術部門、集中治療部門へ迅速に搬送しています。
  • 救急搬送患者に対し、画像検査を速やかに実施するため、救命救急センターと放射線室を一体的に配置しています。
  • 増加する重症外傷患者(高所転落による外傷や交通事故等の重症外傷患者)に対応するため、外傷専門部門(外傷センター)を救命救急センター内に設置しています。

救命救急センターの活動

対象患者救命医療を必要とする全ての救急患者
対応時間365日24時間
受診方法他医療施設ならびに救急搬送組織からの診療依頼に応じ、救命救急センターが受諾する患者を診療します
時間外の救急受診患者も必要に応じ対応します
規模三次救急対応の救命救急センター
診察初療室3室
外来診療室4室
病床数26床(救急ICU12床を含む)
必要に応じ病院内のICU、HCU、一般病棟を利用

救急患者を診るERと集中治療のECU

​ERでは救急外来患者や救急車搬送されてきた傷病者の初期対応を行います。必要に応じて、各専門の診療科への引継ぎを行います。

​ECUでは多発外傷や重症感染症、多臓器不全、中毒、心肺蘇生後などの重症患者の全身管理を行っています。外科や整形外科、脳神経外科など他の診療科と併診して管理しています。

病院前診療

当院はドクターカー(Rapid Response Car)とドクターヘリの同時運用を行っています。

​ドクターカー出動事例
  • 交通事故車両に挟まれて救出に時間を要する
  • 多数傷病者事案
  • 除細動が無効な難治性の致死性不整脈
  • 病院搬送まで時間を要する心肺停止などの重症患者 など

ドクターカーが救急現場に直行することもあれば、搬送中の救急車と合流するドッキング形式の場合もあります。目的は、少しでも早く医師が患者に接触することで救命率を向上させるためです。

災害時に備えて

基幹災害拠点病院として、災害に備え院内の災害訓練を救急科が中心となって行っています。自然災害や交通事故、NBCテロなどの災害時の多数傷病者の受入れ訓練をしています。

またDMAT保有病院であり、日本各地の災害に出動して医療支援を行っています。実際に新潟中越地震や東日本大震災、熊本地震でも出動しました。
政府の防災訓練や県防災訓練、小松空港・能登空港の防災訓練、DMAT実働訓練などにも参加しています。

二次被ばく医療機関として、緊急被ばく医療も行っています。石川県は志賀原子力発電所があり、発電所や発電所以外の放射能事故時の、被ばく患者の受入治療を行います。救急科が中心となって訓練を行っています。

DMAT(Disaster Medical Assistant Team)とは?

『災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム』と定義されています。

災害時の活動を専門的に訓練した医師、看護師、業務調整員から構成されています。

​令和6年能登半島地震における当院の活動

​令和6年1月1日午後4時10分 県内で最大震度7を観測したマグニチュード7.6の地震が発生しました。
この地震により能登半島を中心に石川県では甚大な被害が発生し、多数の県民の方が犠牲となりました。
亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災されたすべての方へお見舞い申し上げます。

当院は石川県の基幹災害拠点病院として、発災直後より災害対応を行いました。
1月1日に当院のDMATチームが公立能登総合病院を経由し公立宇出津総合病院へ到着し支援活動を行いました。
また​石川県庁内に設置された県保健医療福祉調整本部には明星センター長を始め、多くのDMAT隊員が連日にわたり、応援に入った支援チームと協働して調整本部活動を行ました。

石川県立中央病院内には石川中央・北DMAT活動拠点本部が設置され、全国から多数のDMATチームが参集しました。
被災された方を金沢市へ移送する際に、健康状態をチェックするMCCというスポットを病院内に設置し、DMATを中心に運営を行いました。

外傷センターの紹介

外傷センターとは

「外傷センター」とは、「外傷」すなわち「けが」の治療を行う施設を指し、その形は国や地域により様々です。欧米では1960年頃から外傷センターが整備され、防ぎえる外傷死(Preventable trauma death)の減少に貢献してきました。特に外傷先進国のドイツでは、ヘリ搬送システムなどの病院前治療と3つのレベルに分類された外傷センターが整備されており、最も高度の治療を行うレベルⅠの施設だけでも人口100万人に1か所の割合で存在します(図1)。これらのセンターはいわゆる外科や整形外科といった一般的な診療科からは独立しており、特別な教育を受けた専門のスタッフにより運営されています。また、施設によっては初期治療からリハビリテーションまでを同一施設内で完結することが可能であり、この手厚い外傷診療体制のおかげで防ぎえる外傷死のみならず、防ぎえる外傷後遺障害(Preventable trauma disability)も減少させてきました。

一方でわが国では、1977年より救命救急センターが整備され、現在のところ304施設に設置されています。救命救急センター設立当初の目的の1つに増加する交通事故死亡者への対応があったことを考えると、わが国では救命救急センターそのものが外傷センターの役割を果たしてきたと言えるのかもしれません。その後、道路交通法の整備や自動車技術の進歩などにより交通事故による死亡者数は年々減少し、救命救急センターが対象とする病態も外傷から内因性疾患(内科的な病気)へと変遷していきました。しかし、日本損害保険協会によると、交通事故死亡者数が年々減少している一方で後遺症者数は増加しており、その社会的コストは高水準であると報告されています。その原因として、救命救急センターが増加した一方で必ずしも外傷の専門家がセンター内に常駐していないことや外傷診療に携わる機会の多い整形外科医の間で外傷診療が後回しにされてきたことなどが指摘されています。わが国でも、2000年代に入った頃からようやく外傷センターを名乗る施設が散見されるようになりましたが、その形は施設ごとに様々であり、国策として外傷センターを整備している欧米諸国とわが国との格差は非常に大きいと言わざるを得ません。現在のところ国内で重症外傷に対して即座にかつ一貫して専門的な治療が提供できる施設はごくわずかであり、わが国における外傷センターの整備は喫緊の課題であると言えます。

図1 ドイツにおけるレベルⅠ外傷センター
(Scherer J, et al. Eur J Trauma Emerg Surg. 2021)

当院の外傷センターの役割

外傷診療の最大の目標は、防ぎえる外傷死と外傷後遺障害の双方を減らすことにあります。すなわち、救命だけではなく後遺障害を最小限にすることにより患者さんが社会復帰をして初めて外傷診療は成功したものと言えます。

当院では2013年に外傷センターが設立されました。当院の外傷センターは初期診療とその後の集中治療(全身管理)を担う「外傷蘇生部門」と機能再建を担う「外傷再建部門」から構成されています。前者は救命救急センターの医師が担当し、後者は整形外科の医師が担当しています(表1)。そして救急医と整形外科医が定期的に知識や技術を共有し、より良い治療を患者さんに提供することができるよう情熱をもって外傷診療に取り組んでいます(図2)。 現在のところ、当院の外傷センターはドイツにおけるレベルⅠの外傷センターを想定しています。具体的には、他の病院では対応が困難な重症外傷すなわち多発外傷、重度四肢外傷・重症手部外傷、骨盤外傷、脊椎・脊髄損傷、重症関節内骨折などを中心に診療にあたっています(表2)。また、当院はドクターヘリとドクターカーの基地病院であることから、これら重症外傷の集約化も目指しており、実際にその受け入れ数は年々増加傾向にあります。さらに、将来的には体制を整備した上で、中等症の外傷も積極的に受け入れていくことを目指しています。

表1 外傷センターの組織図
外傷センター
外傷蘇生部門外傷再建部門
明星 康裕(救命救急センター長代理)太田 圭亮安竹 秀俊
高松 優香南 啓介島貫 景都
蜂谷 聡明拜殿 明奈菅沼 省吾(外傷センター長)
古賀 貴博寺島 良藤田 健司
山田 はな灰谷 淳下崎 研吾
中嶋 謙斗山口 智広小林 源哉
図2 救急医と整形外科医で定期的に開催している外傷カンファレンスの様子
表2 外傷再建部門の対象病態と担当医
重度四肢外傷・重症手部外傷菅沼 省吾、島貫 景都
骨盤外傷藤田 健司
脊椎・脊髄損傷安竹 秀俊、小林 源哉
重症関節内骨折菅沼 省吾、島貫 景都、藤田 健司、下崎 研吾

医師紹介

明星 康裕(みょうじょう やすひろ)
資格・所属学会等
日本救急医学会 専門医
日本麻酔科学会 指導医
日本ペインクリニック学会 専門医
JATECインストラクター
JPTECインストラクター
MCLSインストラクター
PBECインストラクター
エマルゴシニアインストラクター
統括DMAT隊員
石川県災害医療コーディネーター

日本航空医療学会
日本外傷学会
日本集中治療医学会
日本熱傷学会
日本災害医学会
救命救急副センター長
太田 圭亮(おおた けいすけ)
資格・所属学会等
日本救急医学会 専門医
日本集中治療医学会 専門医
ICLSインストラクター
JATECインストラクター
MCLSインストラクター
統括DMAT隊員
石川県災害医療コーディネーター

日本麻酔科学会
日本外傷学会
日本呼吸療法医学会
日本災害医学会
外傷センター長
金沢大学医学部整形外科協力研究員
菅沼 省吾(すがぬま せいご)
資格・所属学会等
医学博士
日本整形外科学会 専門医機構認定専門医
日本手外科学会 指導医・専門医
日本整形外傷学会 評議員
日本マイクロサージャリー学会 評議員
AO Trauma Japan 上級会員
北陸手外科研究会 世話人
JATECプロバイダー

診療実績

救命センター情報(R6.1~R6.12)

患者数
救急受診患者数15,459
救急車搬送数(応需率)5,162(90%)
救急入院患者数4,172
ドクターカー269
ドクターヘリ144
症例患者数
院外心停止206
重症急性冠症候群104
重症大動脈疾患61
重症脳血管疾患119
重症外傷279
指肢切断3
重症熱傷2
重症急性中毒1
重症消化管出血69
敗血症性ショック28
重症体温異常16
特殊感染症7
重症呼吸不全14
重症急性心不全31
重症出血性ショック8
重症意識障害12
重篤な肝不全0
重篤な急性腎不全13
その他重篤な疾患142

救急医・後期研修医の募集

救急医を志す医師、後期研修医、スタッフ医師共に随時募集中です。一緒に石川県の救急医療を担ってみませんか?
救急専門医、集中治療専門医の資格を取得済の医師は、大歓迎です。

救急科専門医指定病院であり救急専門医取得可能です。
救急医療、集中治療、ドクターヘリ、ドクターカーを経験してみたい医師も歓迎です。

​後期研修は基幹型臨床研修病院のプログラムを用意しております。
詳しくはこちらをご参照ください。

先輩研修医の声

後期研修医

寺島 良 医師 9年目(2024年度)当院後期研修プログラム修了者

救急科専攻医の寺島良と申します。
当院の後期研修プログラムの特徴を紹介します。

  1. 救急車対応
    当院では、年間3,000~4,000台の救急車を受け入れています。石川県では最多の受け入れ台数です。重症外傷、敗血症性ショックなどの重症疾患はもちろん、軽症の救急車を受け入れることもあり、幅広い症例を経験することが出来ます。
  2. 集中治療
    救急外来にて対応した患者で集中治療が必要な方は当科にて管理を行います。人工呼吸器、CHDF、ECMOなどが必要な患者管理を学べます。救急外来での対応だけでなく、患者の良くなっていく姿も診ることができ、やりがいを感じることが出来ます。
  3. プレホスピタル
    当院にはドクターカーとドクターヘリの両方があります。それぞれ病院での医療とは違う、プレホスピタルならではの経験をすることが出来ます。
  4. 働きやすい職場
    勤務はシフト制であり、on/offがはっきりとしています。また、上級医のバックアップも手厚く、丁寧に指導してもらえます。

今後も成長していくこの病院で一緒に働きません。見学をお待ちしています。

初期研修医

山田 はな 初期研修医 2年目 2021年度

​はじめまして。
当院での初期研修における救急科ローテについてお話しします。

当院での救急科の研修は、1年目に4週間×2、2年目に6週間(うち1週間は病理診断科ローテ含む)の合計14週間です。
希望があればそれに上乗せしてローテすることも可能です。

救急科ローテ中の研修では、

  • 救急搬送患者、他院からの紹介患者の初期対応
  • 日中の軽傷外傷患者(walk-in)の対応
  • ドクターカー出動時、運転補助者として同乗
  • 救急科入院中の患者の病棟管理
  • 他科も含めた院内急変患者対応

などを救急科の先生方と共に行います。

当院は県内で最も多く救急搬送を受け入れており、内因性・外因性問わず幅広い疾患かつ重症度も様々な患者さんが日々搬送されてきます。救急科の先生方の指導の下、研修医の間に数多くの症例に触れ、様々な手技を経験できることは大きな魅力の一つだと感じています。

そのほかローテ期間中にレクチャーもあり、初期対応時に意識すべきことや、意識障害の見方、救急外来や集中治療でよく使用する薬剤や人工呼吸器・透析に関する知識などなど、2年間で外来・病棟での対応や講義を通して、初期研修終了後にどの診療科に進んでも当直や急変対応の際に必要なことがたくさん身につけられると思います。

また、ローテに関しては1年時2年時ともに同学年が複数いるよう組まれ、特に1年目の1回目のローテ期間は同時期に2年目が必ず2人いるため、分からないことがあってもすぐに助けてもらえます。救急科の先生方のバックアップに加え、このシステムがあることで私自身もすごく心強かったのを覚えています。

初期研修について考える際、救急科ローテは不安要素の上位に挙がる方も多いかもしれません。見学に来られた時には、ちょっとしたことでも遠慮せず何でも聞いてください。お待ちしています!

お問い合わせ

〒920-8530 石川県金沢市鞍月東2丁目1番地
石川県立中央病院救命救急センター
電話 076-237-8211