臨床工学室の紹介
臨床工学技士(りんしょうこうがくぎし)とは
1987年5月に制定された「臨床工学技士法」に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格です。
医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う事を業とする医療機器の専門医療職種です。
院内ではCE(Clinical Engineer)やME(Medical Engineer)と呼ばれております。
生命維持管理装置はどのようなものですか?
病気などにより生命を維持する機能が低下あるいは停止した場合、その機能の代わりを行う装置です。
どのような装置がありますか?
人工呼吸器 | 肺の状態悪化などにより、呼吸機能が低下したり果たせなくなった場合に使用します。 |
---|---|
人工心肺装置 | 手術で心臓を止める必要がある場合や心臓や肺の機能が低下した場合に使用します。 |
人工透析 | 腎臓や肝臓の機能が悪くなり、代謝機能が低下した場合に使用します。 |
臨床工学技士はどのような場所で働きどのような装置を操作しますか?
ME機器管理室 | ・医療機器管理システム(MIMS)を用い機器情報・点検情報・修理情報・貸出情報を集中管理しています。 ・日々安心してご使用頂く為に、人工呼吸器や輸液ポンプなどの使用前点検や定期点検を実施しております。 |
---|---|
手術室 | ・安全な手術が円滑して実施されるように麻酔器などの点検や手術支援機器(ダ・ヴィンチ)などの準備をしています。 ・虚血性心疾患、弁膜症、大動脈疾患に対して人工心肺や自己血回収装置を操作しています。 ・ペースメーカ、植込み型除細動器(ICD)、両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の新規植込みや交換の際にプログラマを用いデバイスの設定をします。 |
カテーテル室 | ・虚血性心疾患に対しては病変の性状や長さなど血管内超音波(IVUS)、光干渉断層法(OCT)などを用いて観察しております。 ・不整脈に対しては3Dマッピングシステム(CARTO3)などを用い原因となる心筋を探し出します。 |
透析室 集中治療室 | ・慢性腎臓病などに対して人工透析装置、幹細胞採取では遠心型血液成分分離装置を操作をしております。 ・集中治療室では人工呼吸器、経皮的心肺補助装置、人工透析装置など多くの生命維持管理装置が装着されており導入から離脱まで患者さんの状態に応じて調整しています。 |
ペースメーカー外来 内視鏡業務 | ・毎週火曜日にペースメーカに異常が無いかプログラマを用いてチェックしています。 ・検査、治療に使用する電子スコープの取り外しや取り付け、内視鏡機器の保守点検や管理、スコープの洗浄・消毒を行います。また組織の採取や出血部位の止血、ポリープ切除などで処置具を操作し、医師の介助を行います。 |
臨床工学技士は何名勤務していますか?
当院では現在12名(男性9名、女性3名)の臨床工学技士が日々業務にあたっています。
資格取得
- 体外循環技術認定士 2名
- 透析技術認定士 5名
- 呼吸療法認定士 1名
- 心血管インターベンション技師 1名
- 臨床ME専門認定士 1名
- 第1種ME技術者 1名
- 第2種ME技術者 11名
- 医療機器情報コミュニケータ(MDIC) 2名
- 特定高圧ガス取扱主任者(液化酸素) 2名
- 臨床検査技師 3名
- アフェレシス学会認定技士 1名
- 認定集中治療関連臨床工学技士 1名
臨床工学室座右の銘

ペースメーカ外来での仕事
CIEDs(心臓植込み型電気的デバイス)関連業務は、ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)・両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)・植込み型心電計の新規植え込み術・交換術の立会いの際、ペーシングシステムアナライザを操作し電極の至適留置部位を調べ、プログラマを用いデバイスの設定をします。
退院後のペースメーカ外来は毎週火曜日の午後に患者さんのフォローアップをしておりICD・CRT-D・植込み型心電計は不定期にフォローアップをしています。また、条件付きMRI対応ペースメーカのMRI撮像の立ち合いも行っています。
麻酔科外来での仕事
ペインクリニック外来で高周波熱凝固装置で眼窩下神経ブロックや腰部交感神経ブロック・帯状疱疹などの機器の操作・補助を行っています。
脊髄刺激療法(SCS)とは、脊髄に微弱な電気を流すことで難治性の痛みを緩和する外科的な治療方法のひとつです。
この治療では、まず試験刺激(トライアル)を行い、効果があるかどうか確認します。効果があった場合に刺激装置等を体内に植込みます(本植込み)。本植込み後は、患者さんご自身が必要に応じて刺激装置を操作することで、痛みをコントロールし生活の質(QOL)の向上を目指す治療です。
新規植え込み術・交換術の立会いの際、ペーシングシステムアナライザを操作し電極の至適留置部位を調べ、プログラマを用いデバイスの設定をします。
退院後は、不定期にフォローアップをしています。また、条件付きMRI対応デバイスのMRI撮像の立ち合いも行っています。
ME機器管理室での仕事
当院ではME機器管理室で主要な医療機器の中央管理を行っています。
中央管理は医療機器管理システム(MIMS)を用い医療機器の購入・修理・点検・廃棄に至るまでを一括管理しております。
また、輸液ポンプ・シリンジポンプ・人工呼吸器等の医療機器は患者さん毎に点検整備を行っており、点検後の医療機器は電子カルテ上より閲覧する事により貸出状況を把握する事が可能となっており安全で効率的な利用に努めています。
中央管理医療機器
- 輸液ポンプ(一般用):219台
- 輸液ポンプ(重症用):63台
- シリンジポンプ(一般用):92台
- シリンジポンプ(重症用):120台
- 人工呼吸器等:57台
手術室内での仕事
手術室で用いられる医療機器は台数・種類ともに院内で最も多い部署となります。
近年、医療機器の多様化や機能の高度化が進んでおり医師・看護師だけでは対応が難しく専門性をもった臨床工学技士の存在が必要不可欠となっています。
ダ・ヴィンチ症例では機器のレイアウト、インストゥルメントの点検及び管理、ドレーピング、ドッキング、手術中のトラブル対応など、手術を円滑に実施するためにサポートしています。
手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)
サージョンコンソール、ペイシェントカート、ビジョンカートなどから構成される。3つのアームと1つのステレオ3Dカメラを搭載し、アームのカセットを交換することで、様々な処置を行うことができます。術者は数m離れた場所に置かれたコンソールに座って操作を行います。
両眼視で見る3Dモニターを使用して下向きの目線で操作を行うために術者の疲労が少なく、視野も広く奥行きの把握も良好です。
操作は直感的で手振れ防止機能もあるために、ロボットアームで毛筆で米粒に漢字を書くような細かい作業や、1円玉より小さな折り鶴を折ることもできます。



人工心肺装置
心臓と肺の機能を代行する装置です。心臓血管外科手術においては、心臓や肺の機能を一時的に止めて行われるため、人工心肺装置の血液ポンプにより全身へ血液を送り、人工肺で血液ガス交換を行います。また、関連する医療機器として自己血回収装置や補助循環装置などがあります。
カテーテル室内での仕事
虚血
まず患者さんが入室した際にポリグラフを用いバイタル(心電図、心拍数、血圧、動脈血酸素飽和度)を常時、測定し異常が無いかを監視しております。
虚血性心疾患では冠動脈に病変があり心筋に血流が行かず壊死してしまいます。これを防ぎ開通させる為に様々なデバイスを冠動脈に挿入します。
このデバイスの一つに臨床工学技士が操作をする血管内超音波(IVUS)、光干渉断層法(OCT)があります。冠動脈の病変を観察することにより様々な情報を得ることができます。
この得られた情報により安全で確実な治療が進められます。緊急事態の際には常時、スタンバイしてある大動脈内バルーンパンピング(IABP)経皮的心肺補助装置を用い即座に対応しております。
不整脈
不整脈の原因は心筋内の回路を回ってしまうリエントリー、心筋による異常自動能や撃発活動などがあります。
まず電気刺激装置(スティムレータ)を用い不整脈の誘発、診断を行います。確定診断後、3Dマッピングシステム(CARTO3)を用いて心筋内の回っている場所や異常に興奮をしている心筋を見つけ出し焼灼します。
ポリグラフ
心電図、心拍数、血圧、動脈血酸素飽和度などをリアルタイムに測定・記録することが可能です。
不整脈の治療の際にはカテーテルを用い心内電位を記録する事も可能です。


BardラボシステムプラスEPラボラトリーⅡ
(ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)

血管内超音波(IVUS)
超音波を用いて血管内の様子を観察することができ血管の大きさ、プラーク量、性質などを知ることができます。


VISICUBE(テルモ株式会社)
光干渉断層法(OCT)
近赤外線を用いて血管内の様子を観察することができIVUSの10倍もの解像度があり3D構築も可能となっています。


ILUMIEN™ OCT Imaging System (FD-OCT)
(アボットメディカルジャパン株式会社)
ロータブレーター
先端にダイヤモンド粒子をコーティングしたバーを高速回転させ石灰化病変を削り取ります。


ロータブレーター
(ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)
3Dマッピングシステム(CARTO3)
3Dマッピングシステムは心腔内に挿入したカテーテルを3次元空間に表示すことが可能で心臓の立体画像を作成する事ができる。
この装置を用いて不整脈の原因となる心筋を見つけ出す事が可能です。

(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)
経皮的心肺補助装置
下肢の動静脈にカニューレを挿入し静脈から脱血した血液を酸素化及び脱二酸化炭素化する事で全身の循環補助を行います。

(STOCKERT)
大動脈内バルーンパンピング(IABP)
心臓のポンプ機能が著しく低下し薬物でも改善効果が乏しい場合に使用します。
バルーンを胸部下行大動脈に留置し心拍動と同期する事により心臓の負荷を軽減させたり冠動脈の血流を増加させる事ができます。

(テレフレックスメディカルジャパン株式会社)
透析室での仕事
透析室では、物品の準備・穿刺・開始・返血操作・抜針までを看護師とともに行い、透析監視装置や機械室などの日常点検、定期点検(オーバーホールを含む)は臨床工学技士が行っております。
その他、透析監視システムの管理も行っており日々の透析治療がより安全で円滑に行えるように常に管理しています。
また、血液透析だけでなく、血漿交換療法や血球成分除去療法などの特殊血液浄化療法も行っています。
透析室の機械・設備の紹介
当院では、23台の多人数用透析監視装置DCS-100NX(日機装社製)(オンラインHDF対応5台)、2台の個人用透析監視装置DBG-03、DBB-100NXを用いて透析治療を行っています。
透析監視システムはFuture Net Web+(日機装社製)を採用しています。機械室では透析液溶解装置DAD-50NX、供給装置DAB-NX、水処理装置DRO-NXを使用しています。
血液浄化装置の消毒はクエン酸熱水消毒を採用しています。クエン酸熱水消毒は、酢酸消毒よりも清浄度のより高い洗浄を行うことができ、安全に透析液を供給することができます。








