診療科・部門・センター
医療技術部 検査室

検査室の紹介

検査室では、臨床検査技師と検査補助員のスタッフが働いています。
「臨床検査技師」とは国家資格を持ち、患者さんをあらゆる角度から医学的な検査をする専門家です。
検査から得られる情報は、病気の早期発見、経過観察、投薬や今後の治療方針などを決定する重要な基礎データとして利用されます。

組織構成

医療技術部長山口 正木
検査室長小川 哲
室次長岩崎 しのぶ

認定検査技師について

検査を担当する臨床検査技師は、日常検査の経験と学会や研修会での研鑽を重ね、次のような各種認定資格を取得しており安心して検査をうけていただけるよう努めています。

細胞検査士(国内・国際) 6名
血管診療技師4名
認定血液検査技師1名
認定病理検査技師5名
認定心電検査技師2名
緊急臨床検査士15名
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者5名
心臓リハビリテーション指導士1名
医療情報技師2名
細胞治療認定管理師1名
超音波検査士
(循環器領域・体表臓器領域・血管領域・健診領域)
6名
認定輸血検査技師2名
糖尿病療養指導士4名
認定一般検査技師1名
認定臨床微生物検査技師1名
一般 毒物劇物取扱者4名
有機溶剤作業主任者5名
二級臨床検査士7名
遺伝子分析科学認定士1名
医療安全管理者1名
2024年4月現在

100%の認定資格取得を目標としています。

細胞検査士(日本細胞臨床学会・国際細胞学会認定)

ヒトの体は細胞からできています。ヒトから採取された細胞を色々な方法で染色し、顕微鏡でがん細胞(悪性細胞)を探し出す検査を細胞診といいます。細胞検査士はたくさんの細胞を顕微鏡下で良性細胞と悪性細胞に分けます。
がん細胞と疑われたものについては最終的に専門医師が診断をします。
顕微鏡と向き合う毎日です。

超音波検査士(社団法人日本超音波医学会認定)

超音波検査は一般的にエコーと呼ばれ、痛みも副作用もない安全な検査です。妊婦検診で赤ちゃんの動きや発育を見るために行われたりしており、ご存知の方も多いと思います。腹部、心臓、血管などを超音波で検査し、画像で診断します。この検査を行うには超音波の原理などの知識と超音波装置を扱う技術の習得、そしてたくさんの経験が必要です。

認定輸血検査技師(日本輸血・細胞治療学会認定)

輸血は赤血球や血小板などが不足した場合や機能が低下したときに必要なものを補充する、広い意味で移植の一種です。しかし輸血には時に副作用や合併症などのリスクが伴います。安全で適切な輸血を行うために輸血に関する検査、血液製剤の管理などをおこなっています。

認定血液検査技師(日本検査血液学会認定)

ここでいう血液検査は、赤血球・白血球・血小板の数を測定する血球数算定、顕微鏡による形態観察、止血に関する検査などがあります。白血病のような血液疾患が疑われた場合、その診断に必要な検査と治療の効果を判定するための検査を行います。検査結果に異常が見られた場合は、血液が正常に造られているかどうかを骨の中の骨髄液を採取し検査することがあります。

認定一般検査技師(社団法人日本臨床衛生検査技師会認定)

尿検査を筆頭に糞便、髄液、胸水、関節液など体液を検査しています。例えば尿検査なら糖、潜血、タンパクなどを検査し腎臓や泌尿器の疾患があるか、便検査では消化管の出血や寄生虫感染の有無を調べています。身近な検査の一つです。

緊急臨床検査士(日本臨床検査同学院認定)

緊急時に欠かすことのできない検査(尿、血液、心電図、輸血、微生物など)を実施するために心要な基本的知識、手技(検査に用いる機器、試薬、検査キットなど)、を幅広く有しています。

施設認定

  • ISO15189認定施設
  • 日本臨床衛生検査技師会精度保障認定施設
  • 日本輸血細胞治療学会 I&A認証施設
  • 日本臨床細胞学会認定施設

ISO15189認定取得

石川県立中央病院の医療技術部検査室では2022年1月に国際標準化機構ISO15189の認定を取得しました。

ISO15189とは

臨床検査室の品質と能力に関する特定要求事項を提供するものとして国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)が作成した国際規格です。
「組織の品質マネジメントシステムの構築」と「技術的能力と検査結果の品質を保証」する国際規格となります。

認定取得のメリット

  1. 臨床検査室への信頼性と検査結果の精確さの向上
  2. 医療安全への貢献
  3. 医療サービスの向上

今後は定期的にサーベイランスと更新審査を認定機構から受け、認定を維持して参ります。

業務内容

検体検査
採取した血液、尿、便、組織等を調べます
血液検査血球成分算定/白血球分類/血液像/出血・凝固系検査等
臨床化学/免疫・血清検査生化学/薬物濃度/ホルモン・内分泌/感染症/血漿タンパク/腫瘍マーカー/遺伝子検査等
輸血検査血液型/交差適合試験/リンパ球表面マーカー/輸血用血液製剤の管理等
一般検査尿定性/尿沈渣/便/髄液/胸水・腹水等穿刺液
細菌検査培養/菌腫同定/薬剤感受性試験/PCR検査等
病理検査組織標本作成/組織診断/細胞診断/病理解剖の補助等
生理機能検査
心電図・脳波など直接からだの機能を調べます
心電図検査/超音波検査/呼吸機能検査/脳波検査/神経伝導検査/大脳誘発電位検査/自律神経系検査/末梢循環機能検査等

特色ある検査体制

第3次救急指定病院

24時間検査体制:時間外の2人体制(1名夜勤+1名当直)

HIV北陸ブロック拠点病院

エイズ関連検査:HIV抗原抗体検査、HIV1-RNA検査

骨髄移植医療

骨髄移植関連検査:細胞表面抗原検査、末梢血幹細胞採取と保存

検査データの精度管理について

毎年、自施設検査データが正確に報告されているか、他施設との互換性が保たれているかについて調べるために以下のような試験を受けています。

主なものとして、

  • 日臨技 臨床検査 精度管理調査
  • 日本医師会 臨床検査 精度管理調査
  • 石川県医師会 臨床検査 精度管理調査
  • その他 メーカー、専門学会等主催の精度管理調査

など、それぞれの主催する調査に参加しています。そして、いずれも良好な評価を受けています。

外来迅速検査について

外来で当日知ることのできる検査(迅速検査)のおおよその所要時間は、次の通りです。
(血液や尿を採ってから検査結果が報告されるまでのおおよその時間です)

検査内容おおよその時間
貧血などの血液検査(血算)60分
肝機能、腎機能などの血液検査(生化学検査)60分
感染症の検査(肝炎、梅毒など)70分
腫瘍マーカー70分
糖尿病関係の検査(血糖、HbA1cなど)60分
甲状腺ホルモンの検査70分
血液凝固関係の検査60分
尿の検査(一般検査)60分
便の検査(一般検査)60分
インフルエンザ30分
(2023年3月現在) 

検査案内

生理検査室について

受付場所:2F 21 生理検査受付
     1F 1C 女性外来受付(乳腺超音波検査のみ)
受付時間:平日 8:30~17:15

2F 21 生理検査受付にて実施する乳腺超音波検査もあります。

心電図

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
12誘導心電図5-10分手首、足首、胸部に電極をつけます。
不整脈や心臓の筋肉に異常がないかを調べます。
両手首、両足首、胸部を露出しやすい服装
負荷心電図15分手首、足首、胸部に電極をつけます。
段差を昇降し、心臓に軽く負荷をかけて心臓の予備能力を調べます。
両手首、両足首、胸部を露出しやすい服装
加算平均心電図30-60分胸部、背部に電極をつけて心電図波形の合計と平均を交互に繰り返し、通常の心電図では記録できないとても小さな信号を記録します。胸部を露出しやすい服装
ホルター心電図
(24時間、2~7日間)
15分携帯用の小型心電計を装着し長時間の心電図を記録します。血圧計付や血中酸素飽和度計、12誘導心電図を計測できるものもあります。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

超音波

観察する部位にゼリーを塗り、超音波を用いて診断する検査

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
甲状腺15-30分甲状腺の形態や腫瘤、血流を観察します。頚部を露出しやすい服装
乳腺15-30分乳腺の状態や腫瘤の性状を観察します。上半身裸で検査します。
腹部30分肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、大血管等の様子を観察します。検査4時間前より要絶食、空腹で検査します。
小児精巣10分精巣の大きさ、位置、内部の様子を観察します。
関節30分関節の炎症や状態を観察します。
アキレス腱10分アキレス腱の太さや性状を観察します。
心臓30分心臓の動きや大きさ、壁の厚さ、弁の状態、血液の流れを観察します。上半身裸で検査します。
経食道60分胃カメラのように口から食道に超音波内視鏡を入れ、心臓を食道から観察します。食道は心臓のすぐ後ろにあるため肺や骨などに邪魔されず、鮮明な画像が得られます。医師が実施します。
検査4時間前より要絶食です。
頸動脈30分首の動脈の動脈硬化や血管の様子を観察します。頸部を露出しやすい服装
下肢静脈30分下肢の静脈の血管に血栓(血のかたまり)や炎症がないか、静脈瘤がないかを観察します。下半身は下着のみで検査します。脱衣しやすい服装
下肢動脈60分下肢の動脈の血管の動脈硬化や血栓(血のかたまり)の有無、血液の流れを観察します。下半身は下着のみで検査します。脱衣しやすい服装
AVシャント30-60分シャントの血流量や血管の性状を観察します。
シャント作製前は上肢の動脈と静脈の走行、血管径、性状を観察します。
上肢が露出しやすい服装
腎動脈30分腹部大動脈、腎動脈の血流速度や血管の様子、両側の腎臓を観察します。検査4時間前より要絶食、空腹で検査します。
胎児30分胎児の大きさ、向き、先天的な形態異常、胎盤や羊水、臍帯の観察をします。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

末梢循環機能検査

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
ABI(足関節/上腕血圧比)15分足首と上腕の血圧比を測定することにより、動脈硬化の程度を評価します。
SPP(皮膚灌流圧)30分皮膚の小さな血管の血液の流れをみる検査です。動脈硬化が起きると血液の流れが悪くなります。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

運動負荷試験

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
トレッドミル60分心電図、血圧をモニターしながら、ベルトコンベアの上を歩きます。ベルトコンベアは傾斜をつけながら徐々に早くなり、心臓に負荷をかけることで安静時にはわからない狭心症や不整脈の評価をします。専門医が実施します。
運動しやすい服装
エルゴメーター60分心電図、血圧をモニターしながら、固定式自転車でペダルの重さを徐々に変化させて心臓に負荷をかけます。安静時にはわからない狭心症や不整脈の評価をします。専門医が実施します。
運動しやすい服装
CPX(心肺運動負荷試験)60分心電図、血圧、呼気ガスを測定しながら固定式自転車をこぐことで、心臓・肺・運動に使われる筋肉の総合的な機能から患者さんの体力を評価します。主治医が実施します。
運動しやすい服装
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

呼吸機能検査

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
VC(肺気量分画測定)10分最大限に空気を吸ったり吐いたりして肺活量を測定します。
FVC(フローボリュームカーブ)10分息を精一杯勢いよく吐いた時のスピードと量を測定します。どのくらいの速さで吐き出せるかを測定して、気道・気管支の通りやすさをみます。
FRC(機能的残気量)15分息を最大に吐き出しても肺の中に残っている空気の量を測定します。鼻をつまんで、3~4分安静口呼吸を続けて測定します。
DLco(肺拡散能)15分肺の酸素と二酸化炭素のガス交換を行う能力を測定します。息を限界まで吸い、10秒間息を止めた後、一気に吐き出して検査します。
CV(クロージングボリューム)15分肺全体に空気が送り込まれているか、末梢の気道閉塞の程度を調べる検査です。ゆっくりと最大限まで息を吸い、ゆっくりと一定の速さで息を吐いて検査します。
可逆性試験(FVC×2回)50分気管支喘息の診断と治療効果をみる検査です。気管支拡張剤の吸入前後でFVC(フローボリュームカーブ)や呼吸抵抗を測定します。
NOガス分析10分吐いた息に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定して、気道の炎症の状態を評価します。息を十分に吐ききってからマウスピースをくわえ息を吸います。その後一定のスピードで10秒間息を吐いて測定します。
呼吸抵抗10-40分空気の振動に対してどの程度抵抗値があるか、気道の空気の通りにくさを計測します。鼻をつまんで、安静口呼吸を繰り返します。
6分間歩行試験30分6分間、平地を歩くことによって心肺機能が日常生活の労作にどの程度障害があるかを評価します。6分間歩きながら、血中の酸素飽和度、歩行距離、その時の息切れをどのように感じるかを測定します。
メサコリン60分気管支の敏感さを調べる検査です。気管支に刺激のある薬を薄い濃度から徐々に濃い濃度にしながら噴霧し、その都度FVC(フローボリュームカーブ)を測定します。前日夜から服薬を中止してください。
専門医が実施します。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

脳波

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
脳波60分脳の活動によって生じる微弱な電気信号を記録します。頭部にたくさんの電極を装着して検査します。整髪料、ヘアオイル等は控えてください。
脳波(睡眠)90-120分覚醒時から睡眠中の脳波を頭部にたくさんの電極を装着して測定します。睡眠導入剤を服薬する場合もあります。
寝不足で来院してください。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

大脳誘発電位検査

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
ABR(聴性脳幹反応検査)30-120分音が聞こえているか、どのくらいの大きさの音まで聞こえているか耳から脳までの神経回路を検査します。おでこと耳に電極を装着しヘッドホンから音が聞こえた時の脳内の微弱な電気信号を記録します。睡眠導入剤を服薬する場合もあります。
皮質SEP(体性感覚誘発電位)、SSEP(短潜時体性感覚誘発電位)60-90分手足の神経を刺激した時の脊髄・脳に至るまで反応を調べます。頭やおでこ、頚部、腰椎などに電極を装着して、手・足に弱い電気刺激することによって誘発される脳内の微弱な電気信号を記録します。
VEP(視覚誘発電位)90分眼が見えているか、視神経から脳までの神経回路を検査します。頭部に電極を装着し、モニター画面を見ることによって誘発される脳内の微弱な電気信号を記録します。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

神経伝導検査

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
運動神経(正中、尺骨、橈骨、脛骨、腓骨)各15分手足の末梢運動神経が正常に機能しているか調べます。皮膚の上から運動神経を電気で刺激し、刺激の伝わる速さを測定します。検査部位が露出しやすい服装
感覚神経(正中、尺骨、橈骨、腓骨)各15分手足の末梢感覚神経が正常に機能しているか調べます。皮膚の上から感覚神経を電気で刺激し、刺激の伝わる速さを測定します。検査部位が露出しやすい服装
顔面運動神経20分顔面の神経が正常に機能しているか調べます。皮膚の上から顔面神経を電気で刺激し、筋電図を記録します。
瞬目反射20分突発的な刺激で反射的にまぶたを閉じる反応が正常に機能しているか調べます。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

自律神経機能検査

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
自律神経機能検査30分自律神経のバランスを検査します。寝ている時と立っている時の血圧、心拍数、心電図を測定します。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

ヘッドアップティルト試験

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
ヘッドアップティルト試験90分自律神経のバランスを検査します。寝ている時と立っている時の血圧、心拍数、心電図を測定します。立っている時に薬剤を投与し負荷をかけて測定する場合もあります。専門医が立ち会います。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

CPT(電流知覚閾値検査)

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
三叉神経、正中神経、腓骨神経20分電気刺激による知覚を数値で表す検査です。足の親指、手の人差し指、おでこに電極をつけで弱い電気刺激を流して検査します。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

持続グルコースモニタ

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
CGM15分皮下に刺した細いセンサーにより、皮下のブドウ糖を持続的に測定することによって血糖変動の傾向を記録します。1~10日間装着します。装着してレントゲンやMRI等の検査はできません。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

術中モニタリング検査

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
ABR、NCV、MEP、SEP、NIM終日脳の手術をする際に、ABRやNCV、MEP、SEP、NIMなどを検査し、手術中の神経の状態を観察します。手術室にて行います。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

新生児聴覚検査(スクリーニング)

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
新生児聴覚検査(スクリーニング)15-30分生まれて間もない赤ちゃんの耳の聞こえ方を検査します。赤ちゃんが眠っている間におでこ、肩、首のうしろに電極をつけ、耳から小さな音を聞かせて、反応を測定します。病棟で熟睡時に実施します。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

電気眼振図

検査項目検査所要時間検査の概要注意事項
電気眼振図30分左右の目の横とおでこに電極をつけて、耳に少量の冷水を入れ、めまいを誘発し、その時の眼球の動きを記録します。脳や内耳のどこの障害でめまいが起きているかを調べます。主治医が実施します。
※検査所要時間に待ち時間は含まれていません。

病理検査室について

病理検査とは、病気(疾患)の診断や原因(病因)の究明を目的とした検査です。
手術または内視鏡検査等で採取された臓器、生検組織、体腔液、尿、喀痰などから標本を作製し、染色を施した後に顕微鏡を用いて詳しい診断を行います。病理組織検査、術中迅速組織検査、細胞診検査、病理解剖が含まれます。

病理組織検査

生検組織診断

治療方針を決めるために、胃・大腸や肺の内視鏡検査を行った際に病変の一部をつまみ採ったり、皮膚などにできものができたときにその一部をメスなどで切りとったりして、病変の一部の組織を標本にします。この検査を「生検(せいけん)」といい、その診断を生検組織診断とよびます。
当検査室では、超音波を用いた迅速処理装置を有しており、臨床からの至急依頼に対して、検体提出から翌日で結果報告が可能です。

手術で摘出された臓器・組織の診断

摘出された臓器・組織は、病理医が肉眼で病変の部位、大きさ、性状、広がりを確認し、診断に必要な部分を必要な数だけ切りとります。臨床検査技師がこの臓器・組織の顕微鏡標本をつくります。病理医が標本を顕微鏡で観察し、どのような病変がどれくらい進行しているか、手術でとりきれたのか、追加治療が必要かどうか、がんの場合、悪性度や転移の有無など、治療方針決定に役立つ情報を臨床医に提供します。
当院は「総合母子医療センター」として、高度な医療を24時間体制で提供しています。当検査室では胎盤の受け取りを24時間対応しており、胎盤の組織診断の点に貢献しています。

術中迅速組織診断(手術中の迅速診断)

病変に到達できる部位では、手術前に生検を行って病理診断します。しかし、病変が体の深い部分にあるために生検が難しい場合、手術前に病理診断ができず、「術中迅速診断」を行います。術中迅速診断では、手術中に採取された病変組織から迅速に標本作製を行い、検体の提出から30分程度で病理診断が行われます。標本作製を臨床検査技師が行います。診断結果は執刀医に連絡され、手術方針が決定されます。病変がとりきれたどうかの確認のため、手術によってとりだされた臓器・組織の断端を調べたり、がんの転移が疑われる部分を調べて手術で切除する範囲を決めたりするときにも、術中迅速診断は役立ちます。
当検査室では、迅速標本を作製する機械を2台保有しており、複数科からの同時依頼でも対応可能です。より迅速に結果を報告できるように努めています。

Topics!がん遺伝子検査とは

手術や生検などで採取された臓器は、診断だけでなく、がん遺伝子検査にも用いられています。
がん遺伝子検査を行うことによって、がんの種類だけでなく、遺伝子異常といった一人一人のがんの特徴を調べることができます。自分のがんにあった治療薬が見つかる可能性が高まることが期待できます。
がんゲノム遺伝子検査は、多数の遺伝子を同時に調べることができる検査です。

●当院で行われているがんゲノム遺伝子検査の一例

検査名対象
FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル固形がん
AmoyDx® 肺癌マルチ遺伝子PCRパネル肺がん
オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム乳がん

細胞診検査

細胞診

肺がんや膀胱がんでは、痰や尿の中にがん細胞が混じることがあります。痰や尿を顕微鏡で調べてがん細胞がいるかどうかを判断するのが細胞診断(いわゆる「細胞診」)です。子宮がん検診では、子宮頚部(けいぶ)から細胞をこすりとって調べます。甲状腺やリンパ節などに結節があると、細い針を刺して吸引し、とれた細胞の中にがん細胞がいるかどうかを調べる場合もあります。

術中迅速細胞診

手術時に採取された洗浄液(開腹・開胸時に腔内を生理食塩水で洗浄したもの)を回収し、迅速に標本作製を行い15分程度で診断が行われます。細胞検査士が鏡検し、陰性(悪性細胞なし)の場合は、執刀医に連絡されます。悪性が疑われる場合は、病理医と相談をして、最終診断は病理医が行い、執刀医に連絡されます。
卵巣がん・胃がんでは進行期を決める一因となります。また、腹腔鏡手術では洗浄液中にがん細胞が認められた場合には、術式の変更が行われる可能性があります。

ROSE:rapid on-site evaluation

消化器や呼吸器、肝胆膵系組織の内視鏡検査中に採取された検体の標本作製を行い、目的の細胞が十分量採取されているかどうかを迅速に評価し、臨床に報告を行います。不十分である場合、再穿刺を行います。検査中に、細胞がとれているか助言することで、再検査の可能性を少なくすることができ、患者さんの負担軽減や診断向上につながります。

病理解剖

ご遺族の承諾のもとに、病死された患者さんのご遺体を解剖させていただくのが「病理解剖」で、剖検(ぼうけん)ともよばれます。生前の診断は正しかったのか、どのくらい病気が進行していたのか、適切な治療がなされていたのか、治療の効果はどれくらいあったのか、死因は何か、といったことを判断します。病理解剖では、外からわかりにくいように切開し、診断に必要な臓器をとりだして、2~3時間で終了します。ご遺体は解剖後に清拭(せいしき)されてご遺族 のもとに戻されます。病理解剖の肉眼所見は、解剖を行った病理医から主治医へと報告され、ご遺族に説明されます。なお、顕微鏡所見を含めた最終診断には少し時間が必要です。

診断後に、CPC(臨床-病理検討会Clinico- Pathological Conference)が行われます。CPCとは、臨床医、病理医、剖検に関わった臨床検査技師等が集まり、症例検討を行う会です。剖検例を検討するというのは、まさしく「患者さんから学ぶ」典型と言えます。病理解剖の結果が蓄積されることによって、他の方法では得がたい医学の進歩への貢献が期待されます。
当院では毎年、解剖された方々の御霊をお慰めするため病理解剖物故者追悼慰霊式を開催しています。

参考文献、サイト

輸血検査について

検査

  • ABO、RhD血液型
  • 交差適合試験
  • 不規則抗体スクリーニング
  • 不規則抗体同定
  • 直接・間接抗グロブリン試験
  • Rh因子
  • 造血器悪性腫瘍細胞表面マーカー検査
  • リンパ球サブセット検査(T細胞サブセット、T/B細胞比率)

製剤管理

  • 血液製剤管理・保管
  • アルブミン製剤管理・保管
  • 自己血管理・保管

細胞治療

  • 末梢血幹細胞管理・保管
  • 骨髄細胞管理・保管

輸血機能評価認定(I&A)とは

Inspection(点検)してAccreditation(認証)するシステムであり、適切な輸血管理が行われるか否かを第三者が点検し、安全を保障する認定制度です。
当院はI&Aを取得し、より安全な輸血管理が行われるよう努めています。

病気と検査

検査による科学的データは、病気の診断や治療・経過観察する上で必要になります。ここでは3つの病気についてその主な検査の内容について簡単に紹介します。

乳がんの検査について

乳がんは30代から増え始め、40代後半でかかる割合が最も高くなり、女性の壮年層(30~64歳)における死亡原因の第一位となっています。

マンモグラフィ

乳がんが白く写っています

乳房専用のX線撮影(レントゲン)

超音波検査

矢印で示した黒い部分が乳がんです

超音波エラストグラフィにより、組織の硬さを色で評価することができます

乳がんは硬いことが多く、良性腫瘤は軟らかいことが多いため、組織の硬さを補助診断として色で評価することがあります。

異常となる血液検査

CA15-3、CEAなどの腫瘍マーカー

乳がんの自己検診方法

自己検診を続けることで、ふだんと違う乳房の変化に気付くことができます。
毎月生理が終わった後4~5日が適当です。閉経後の人は毎月、日を決めて行いましょう。

鏡の前に立ってよくチェック

  1. 鏡の前で両腕を上下させたり、横向きになったりして乳房の形や大きさに変化がないか調べます。
  2. 乳首の“はれ”“くぼみ”“へこみ”“ひきつれ”などがないか調べます。

入浴時に触ってよくチェック

  1. 乳房に石鹸をつけ、チェックする側の腕を上げたり下げたりしながら検査します。
  2. 反対側の手の指の腹で、少し押さえ気味に“の”の字を描くように触れます。乳房全体に円を描くようにすると良いでしょう。反対側も行いましょう。
  3. 脇の下も、しこりがないかチェックしましょう。
  4. 乳首のただれがないか、乳首を軽くつまんで血液の混じった分泌物が出ないか調べます。

おやすみ前に仰向けでチェック

  1. 仰向けになってチェックする側の背中の下に、あまり高くない枕あるいはタオルを入れて乳房全体が広がるようにします。
  2. 入浴時と同じ要領で乳房に触れます。
セルフチェックで異常が見つかった場合や、少しでも気になることがあった場合には、すぐに医療機関で検査を受けましょう。

乳がん早期発見のために、30歳からは毎月自己検診を行い、40歳からは1年に1回乳がん検診を受けることが大切です。

乳がんと病理検査

視診・触診・マンモグラフィ・超音波検査により乳がんの可能性がある場合には、細胞や組織を顕微鏡的に観察する病理検査によって確定診断を行います。
以下、実際の症例を用いて説明します。

乳頭分泌物による細胞診検査

乳頭から褐色の分泌物が採取されました。分泌物から採取された細胞をスライドガラスに塗って、色を付けることにより(パパニコロウ染色)顕微鏡で観察することが可能となります。
顕微鏡で観察して異常細胞がないか調べます。

細胞診においては、細胞検査士が異常細胞を探します。悪性が疑われる細胞については、病理医と共に相談をし、病理医が最終診断をします。
この細胞は悪性(腺がん)と診断されました。

がんが強く疑われる細胞が出現しています。

針生検による組織診検査

がんが疑われるしこりに針を刺して、しこりの一部を採取します。
採取されたしこりでHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色標本を作製します。
HE染色標本を作製することで細胞の観察が可能となります。

良性か悪性かの鑑別に加えて、悪性だった場合は、浸潤の有無やがんの特徴について調べることができます。特徴からがんを分類することができ、予後推定や治療選択が可能となります。

赤く囲んだところに充実性に増殖するがん細胞が出現しており、悪性(乳管がん)と診断されました。

乳房切除手術検体による組織診検査

手術療法が選択され、乳房切除手術が行われました。

左が切除された乳房の割面の写真です。右が黒く囲んだところのHE染色標本です。
赤く囲んだところに約14mm大の腫瘤が認められます。

赤く囲んだところを更に拡大した画像です。
がん細胞が密に増殖していることが観察できます。
術後の病理検査では、がんが取り切れているか、リンパ管や血管にがん細胞がないか、浸潤していないかなど詳しく観察します。
乳頭分泌物をきっかけとし、がんの発見につながった症例について紹介しました。
乳がんに気づくきっかけは乳頭分泌物が出る、しこりがある、などです。
気になる症状がある場合は病院にご相談ください。

心筋梗塞について

血栓などが原因で心臓の栄養血管である冠動脈が細くなり、心臓の筋肉に充分な血液を送ることができずに、心臓の筋肉の一部に傷み(壊死)が生じてしまうことがあります。
重篤な不整脈をおこしたり、心臓のまわりに水が溜まったりして、最悪の場合急死する危険性もあります。

急性心筋梗塞の超音波検査

下の写真は、心臓を足元から見上げて心臓を輪切りにした超音波検査の写真です。
矢印で示した所が心筋梗塞のため心臓の筋肉が死んでしまい、ほとんど動かなくなってしまった部分です。

心筋梗塞の心電図

正常な場合の心電図は、おおよそ下図のようになっています。
(ただし誘導法によっては異なることもあり、個人差もあります。)

ところが、心筋梗塞を起こすと心電図も変化します。
たとえば心筋梗塞の中で“下壁梗塞”を起こした場合の心電図を示します。

発症前

このような心電図が…

発症直後

こんなに変化します!

回復期

時間が経つとさらに変わります

異常となる血液検査

トロポニンI、CRP、CKAST、LDH、BNPなど

糖尿病について

血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用するホルモンがインスリンです。このインスリンの量が不足したり、効きが悪かったりすると、ブドウ糖を上手く利用できず血糖値が高くなります。血糖値が高い状態が続くと全身の血管や神経に障害を及ぼし、様々な合併症を発症します。これが糖尿病です。

異常となる血液・尿検査

血糖、HbA1c、グリコアルブミン、尿糖、ブドウ糖負荷試験など

糖尿病の生理機能検査

神経伝導検査

糖尿病の合併症の1つである末梢神経障害を調べる検査です。
皮膚の上からわずかな電気刺激をして伝わる速さを測ります。
少しビリビリとした刺激や痛みを感じるかもしれませんが、害はないので心配いりません。

ABI(脈波)

動脈硬化の程度や、動脈硬化が原因で下肢の血管が途中で狭くなっていないかを調べる検査です。
ベッドに仰向けになり両手両足の血圧や心電図、心音図を測定します。

頸動脈超音波検査

頸動脈(首の左右両側)に超音波をあてて、動脈硬化のために血管の壁が厚くなっていたり、途中で血管が狭くなって血液の流れが悪くなっていないかを調べます。
ベッドに枕をしないで仰向けになり超音波をあてて検査します。
痛みなど全くなく害はないので心配いりません。

自律神経機能検査

内臓や血管などの働きを調節する自律神経の機能を調べる検査です。
自律神経そのものを直接測ることができないため、血圧、心電図などを測定することにより検査します。

疾患と血液検査データの見方

代表的な疾患と検査のおおまかな説明です。基準値は日本臨床検査標準化協議会(JCCLS)に準拠しています。詳しくは担当医にお尋ねください。

心筋梗塞

検査項目基準値
トロポニンI
(トロポニンアイ)
トロポニンIとは心筋に特異的に含まれる物質で、心筋が障害を受けたときに血液中で増えます。心筋梗塞発症後、比較的早期(3~5時間後)に検出されますが、発症後初期の検査では陰性を示すことがあります。腎疾患でも検出されることがあります。<0.023ng/mL
CK
(クレアチニンキナーゼ)
CKは筋肉や脳に分布している酵素で、これらが障害を受けたときに血液中に出ます。心筋梗塞など心筋の障害や、筋疾患で血液中の濃度が高くなります。心筋梗塞の場合、発症後数時間から12~24時間後まで検出されます。男 59~248U/L
女 41~153U/L
LDLコレステロール
(低比重リポ蛋白)
悪玉コレステロールと呼ばれています。肝臓で作られたコレステロールを体内に運びます。血中濃度が高すぎると動脈硬化を引き起こす原因となります。65~163mg/dl
HDLコレステロール
(高比重リポ蛋白)
善玉コレステロールと呼ばれています。余分なコレステロールを肝臓に戻します。一般的にLDLが低く、HDLが高い方が健康に良いとされています。男 38~90mg/dl
女 48~103mg/dl

糖尿病

検査項目基準値
糖負荷試験糖尿病が疑われる場合、短時間に一定量のブドウ糖水溶液を飲み、一定時間経過後の血糖値を測定して、糖尿病かどうかを診断する方法です。判定基準のとおり
HbA1c
(ヘモグロビンエーワンシー)
血糖のコントロール指標の一つです。過去約120日間の平均的な血糖状態を表しています。血糖と違い、食事の影響を受けません。4.9~6.0%(NGSP値)
*糖負荷試験判定基準
正常型境界型糖尿病型
空腹時血糖110mg/dl>110~125mg/dl126mg/dl≦
随時血糖 200mg/dl≦
75g糖負荷試験負荷後2時間値
140mg/dl>
負荷後2時間値
140~199mg/dlのもの
負荷後2時間値
200mg/dl≦

上記の検査で2回以上の糖尿病型が確認できれば糖尿病とします。
また、1回の糖尿病型であっても次のいずれかの条件を満たせば糖尿病とします。

  1. 糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
  2. HbA1c 6.5%以上(NGSP値)
  3. 確実な糖尿病性網膜症の存在

境界型というのは、糖尿病とは診断されませんがちょっと危ない糖尿病予備軍です。将来糖尿病を発症する確立が極めて高く、今のうちから気をつけたほうがよいと思われます。

乳がん

検査項目基準値
腫瘍マーカー:腫瘍があることによって作られる物質で、この物質を測ることにより癌の診断の補助や、病期の予測、経過観察、治療効果の判定などに利用できるものをいいます。乳がんではCA15-3、BCA225などがあります。
CA15-3腫瘍細胞から分泌される糖タンパク質です。これを測定することで乳癌の予後診断の判定に役立ちます。25.0 U/ml以下
BCA225乳癌の早期発見よりも乳癌術後のモニタリングや再発乳癌に対する治療効果判定のために測定します。160 U/ml未満
CEA癌胎児性抗原、胎児期にみられるタンパク質で出生後にはほとんど検出されない。乳癌だけでなく、消化器系の癌やその他の臓器に病変があった場合でも検出される。癌のスクリーニングとして測定されます。5 ng/mL以下

肝機能障害

検査項目基準値
ASTAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は肝臓や筋肉の細胞や赤血球の中にある酵素で、これらの細胞が壊れたとき血液の中に出てきます。13~30 U/L
ALTALT(アラニンアミノトランスフェナーゼ)は、肝臓の細胞にだけある酵素です。肝臓の細胞がこわれたときには、多くの場合GOTとGPTが同時に増加します。男 10~42 U/L
女 7~23 U/L
γ-GTP
(ガンマ)
肝臓や腎臓などに含まれている酵素です。アルコールや薬剤で肝細胞が壊れたときなどに血液中に増えます。肝疾患(慢性・急性肝炎、肝硬変、肝臓がん、薬剤性肝障害)で高値を示します。γ-GTPはアルコールに敏感でアルコール性肝障害の診断に特に重要な検査です。男 13~64 U/L
女 9~32 U/L

貧血

検査項目基準値
ヘモグロビン
(Hb)
赤血球の成分で血色素と呼ばれています。肺から酸素を運搬する働きがあります。貧血で不足した場合は息切れやめまいなどを起こすことがあります。男 13.7~16.8 g/dl
女 11.6~14.8 g/dl
ヘマトクリット
(Ht)
一定量の血液中に含まれる赤血球の容積の割合を表します。基準値より低い場合は貧血を疑います。男 40.7~50.1 %
女 35.1~44.4 %
血清鉄食物からとった鉄分は血液中ではトランスフェリンという蛋白と結合し、ヘモグロビンを造るもととなり、さらに赤血球が造られます。血清鉄が基準値より低い場合は鉄欠乏性貧血が疑われます。40~188 μg/dl