診療科・部門のご案内

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循環器内科

虚血性心疾患

 生活習慣の西洋化に伴うメタボリック症候群(肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧)罹患患者の増加に伴う動脈硬化性疾患の増加が社会的問題となっていることは前述しましたが、心臓疾患においても、冠動脈の動脈硬化による疾病、すなわち虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の占める割合が急激に増加してきています(図5-6)。
 虚血性心疾患は、出来る限り早く診断し、治療することが生命を守るためには、きわめて重要な点となります。当院では、疾患の確定診断となる心臓カテーテル検査(CAG)、治療となる経皮的冠動脈形成術(PCI)は、必要と判断されれば24時間施行可能な体制をとっています(図7-9)。
 当院でのCAGは、1977年(昭和52年)、PCIは1985年(昭和60年)より開始し、2012年までCAG 約25,000件、PCI 約7,000件の検査、治療を行っています。これは、本邦でCAG、PCIの技術が認可されて間もない時期より、当院でもいち早く、この検査、治療を行っていることになります。現在に至るまでに蓄積したコンピュータ保存の詳細な検査データも20,000件を超えています。
 積み重ねた数多くの症例経験や豊富なデータ管理に基づく技術の切磋琢磨、安全性の追求が現在まで続けられており、冠動脈疾患治療に関しては北陸でも中心的な役割を担っていることを自負しています。
 一方で、患者様の検査による苦痛を少しでも軽減させる方法を日々思索し、臨牀に還元しています。そのひとつの例として、カテーテルの挿入部位を橈骨動脈主体としました。2012年度のCAG、PCIの約85%が橈骨動脈アプローチです。このため、病室に帰室した直後からの坐位姿勢、短距離の歩行や排泄が可能となりました(図10)。また、固定法の工夫により、橈骨動脈からの出血による大きな合併症も殆んど認められなくなっています。
 また、太いカテーテルが治療に必要であり、大腿動脈からのアプローチを行った際にも、血管周囲に特殊なコラーゲンを注入し止血する方法(Angioseal)を用いることによって、1時間後には絶対安静が解除され、3時間後にはベッド傍に座れるまでになります。
 経皮的冠動脈形成術にはバルーンによる拡張とステント挿入の他、先端にダイヤモンドチップが付いたバーを高速回転させて石灰化の強い硬い病変を切削する方法(高速回転式アテレクトミー(ロータブレーター)(図11))もあります。この方法を臨床使用するには一定の施設基準が必要ですが、当院でも2008年4月より再認可され、患者様の病変に応じた治療法や治療機器を選択し、安全で最良の成果が上がるように努めています。

(図5)冠動脈の解剖
冠動脈の解剖図

(図6)冠動脈硬化の進行
冠動脈硬化の進行の図

(図7)経皮的冠動脈形成術(PCI)(バルーンカテーテルによる冠動脈の拡張)
バルーンカテーテルによる冠動脈の拡張の図

(図8)冠動脈内へのステントの挿入と留置
冠動脈内へのステントの挿入と留置の図

(図9)経皮的冠動脈形成術(PCI)の実際
(前下行枝完全閉塞による急性心筋梗塞に対して緊急に施行したPCI)
経皮的冠動脈形成術(PCI)の実際の画像

経皮的冠動脈形成術(PCI)の実際の画像

(図10)心臓カテーテル検査、治療後の橈骨動脈の圧迫止血
心臓カテーテル検査、治療後の橈骨動脈の圧迫止血の写真

(図11)高速回転式アテレクトミー(ロータブレーター)
ロータブレーターの図

不整脈

 脈の乱れや動悸症状、または健康診断で指摘された不整脈など「不整脈」で病院を訪れる理由は様々です。「不整脈」といっても、経過観察でよいものから放置すれば突然死に至るものまで、その治療法や予後も千差万別です。早期に専門医を受診し、きちんとした診断をつけることが重要です。
 不整脈はその原因や程度を調べるために、外来での心臓超音波検査、24時間心電図などから検査を開始することが多いですが、場合によっては、カテーテルを用いた電気生理学的検査や植込み型心電計による検査を必要とすることもあります。
 不整脈の治療法としては、薬物療法だけでなく、経血管的にカテーテルで治療を行うカテーテルアブレーションや、ペースメーカ・植込み型除細動器(ICD)といった心臓植込みデバイスによる治療も行われます。
 頻脈性不整脈の中には、発作性上室性頻拍症や心房粗動など、カテーテルアブレーションにより根治が期待できるものも多くあり、最近では医療機器の進歩と共に心房細動や心室期外収縮/頻拍などに対する治療成績も非常に向上してきています。(図1)
 徐脈性不整脈に対するペースメーカについては、自宅にいながらその作動状況などを担当医が確認できる遠隔モニタリングや、MRIに対応したものが当たり前になりつつあり、患者様の病態によっては、電極がなく心室内に直接植え込むカプセル大のリードレスペースメーカも多く使用するようになりました(図2)。
 3次救急救命センターである当院には、毎年多くの方が院外心肺停止で搬送されてきますが、致死的不整脈を生じ、幸い回復が得られた方、もしくは、今後心臓突然死を生じる危険性を持った患者様に対しては、積極的に植込み型除細動器(ICD)の植込みを行っています。これについてもペースメーカ同様遠隔モニタリングやMRI対応となっており、血管内にリードを入れる必要がない完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)を選択することも増えてきました。(図3)
 このような植込み型心臓デバイスが増えてきた中で、残念ながらある程度の割合でペースメーカの感染やリード不全が生じ、植え込まれたデバイスを一度体外に抜去してしまう必要が生じることがあります。このような状況に対して、当院では心臓血管外科医の協力のもと、2020年から経血管的にペースメーカリードを抜去する経皮的リード抜去手術を行っており、北陸3県の病院から広く紹介を受けています。(図4)

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(図1-1)3Dマッピングシステム(左CARTOシステム、右 Rhythmiaシステム)を用いたカテーテルアブレーション治療

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(図1-2)心房細動に対するバルーンカテーテルを用いた肺静脈隔離術(上:クライオ(冷凍)バルーン 下:レーザーバルーン)

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(図2)右心室内に留置されたリードレスペースメーカ(Micra® Medtronic社)
脈拍数が少なくなる、徐脈性不整脈に対しては、カプセル大の小型のペースメーカ(リードレスペースメーカ)を心臓に植え込む治療も行っています。

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(図3)完全皮下植込み型除細動(S-ICD ボストンサイエンティフィック社)

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(図4)エキシマレーザーシース(フィリップス社)を用いた経静脈的リード抜去手術

閉塞性動脈硬化症

 下肢のしびれや歩行時の疼痛が、整形外科的な原因だけではなく、下肢動脈の動脈硬化による血行不全によることも決して少なくないことが判ってきています。まずは、外来での簡単な動脈波の検査(ABI)にてスクリーニングが可能です。ここで下肢動脈の動脈硬化が疑わしい場合には、さらに3D-CTや血管造影検査にて確定診断をつけます。
 従来、動脈のバイパス手術を行うしか治療方法がなかった患者様でも、心臓のカテーテル技術を応用し、バルーンによる動脈硬化の拡張やステントの留置で内科的に治療可能なことがしばしばあります。
 当院でも下肢動脈に限らず、腎動脈(腎血管性高血圧症)、鎖骨下動脈などのカテーテル治療も行っています(図15)。

(図15)下肢動脈の高度狭窄に対する経皮的動脈形成術(PTA)
 バルーンによる拡張後にステントを留置することで、総腸骨動脈の狭窄は良好に拡張し、患者様の歩行時の疼痛も著明に改善しました。
経皮的動脈形成術(PTA)の画像

心不全

心臓内の刺激伝導に障害を伴う重症心不全例に対しては、心臓再同期療法を導入しています。これはバラバラになった右心室と左心室の収縮位相を機械的に同じリズムに戻すことによって、心臓のポンプとしての効率を高める治療法です。(図5)

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(図5)両室ペーシング機能付植込み型除細動器(CRT-D)
CRT-Dは、右心室のリードと左心室のリードで心臓を挟み込むようにして、心室再同期を行い、ポンプ機能を改善させます。

ペースメーカー・クリニック

 ペースメーカや植込み型除細動器植込み術後患者さんの機械的トラブル(電池切れ・電極の断線など)の防止および、不整脈などの検出、器械設定の調整目的で、循環器内科の特殊外来(予約が必要です)としてペースメーカ・クリニックを行っております。ペースメーカチェックは最低でも年に1度は必要とされております。
 内容は、胸部X線写真・心電図・ペースメーカチェック(プログラマーを用いて)および問診・診察・指導です。
 場所は、循環器内科で、日時は毎週水曜日の午後です。チェックに使うプログラマーがペースメーカの会社毎に異なるため以下のように行っております.

第1週 ボストン
第2週 バイオトロニック,アボット(SJM)
第3週 ボストン・マイクロポート(SORIN)
第4週 メドトロニック

※祭日の場合は第5週あるいは翌月になりますので御電話にて御確認下さい.

 自分のペースメーカがどの会社のものかわからない場合あるいはこれら以外の会社製の場合は、ペースメーカ手帳をお手元において、循環器内科までお電話下さい。
 当院以外の病院でペースメーカを植え込まれている方でも、ペースメーカチェックを御希望の方は、循環器内科外来まで御気軽に御相談下さい。
 また、ペースメーカに関するトラブルが疑われるような場合には、当院心臓血管外科外来又は当番医師まで御連絡下さい。

病診連携・・・かかりつけ医の皆様へ

ペースメーカー・クリニックを開始致しました.地理的な問題などでこれまで定期的なペースメーカーチェックが行われていなかった患者様を含め,かかりつけ医への情報を提供しながら定期的なフォローを致します.これまでペースメーカーチェックを受けてこられなかった患者様も受け付けておりますので御相談下さい.

施設認定

日本心臓血管外科専門医機構研修施設