診療科・部門のご案内

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整形外科

スポーツ整形外科
(担当:虎谷 達洋 医師)

スポーツ整形外科では、毎週水曜日の午後2時から午後5時ごろまで、スポーツ傷害(外傷+障害)・膝関節疾患・肩関節疾患の診療を行っています。

○特色
 スポーツ整形外科は、スポーツに関連して発生した傷害(スポーツ傷害)を対象とした診療科です。
 スポーツ傷害には、スポーツ等の競技によって発生した骨折や脱臼、靭帯損傷などの怪我=スポーツ外傷(ケガ)と、微少な外傷の繰り返しによる慢性的な機能障害=スポーツ障害(使いすぎ)があり、競技種目や年齢によって発生しやすい傷害が存在します。そのため、傷害の特殊を理解し、早期にスポーツ復帰できるように適切な診断・治療に努めています。
 スポーツレベルは部活動選手やトップアスリートのみならず、スポーツ愛好家やレクリエーションレベルまで多様な方を対象としております。特に、成長期のスポーツ傷害では可能な限り練習を継続しつつ治療を行い、スポーツレベルを落とさずに早期に復帰できるように専門的な治療を行っています。
 さらに、スポーツをしている方に限定せず、肩関節や膝関節に障害をかかえている方すべてを対象として、診断・治療を行っております。

   

○診療内容
 多彩なスポーツ傷害を正確に診断するために、念入りな診察とレントゲンやCT、MRIなどの画像診断を行い、同時にスポーツの種目や競技年数を把握し、保存的治療もしくは手術的治療をおこないます。さらに、低侵襲で外来でも行うことができる超音波検査も導入して診断・治療に用いています。
 スポーツ整形では、部分的治療だけではなく、体全体のバランスを見ながらの治療を行う必要があるため、整形外科的メディカルチェックに基づいた装具・運動療法・手術療法・リハビリ療法などの総合的な治療を行っています。
 保存的治療では、適切な安静と、ストレッチ、アイシングなどの自己管理指導、再発を防止するためのリハビリ方法についての指導を行います。
 スポーツに関連せずとも肩関節や膝関節に障害を抱えている方に対しても同様に、精密検査を行い、適切な治療を行っています。前述の超音波装置を利用して確実な関節内注射や、日帰りの肩関節授動術も行っております。

   

スポーツ整形外科で治療する代表的な疾患には以下のようなものがあります。

半月板損傷

 半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にある軟骨によく似た組織です。その名の通り、月のような形をした半月板が内側と外側にあります。膝関節の衝撃吸収や安定化させる役割を果たしています。半月板が損傷すると、関節が腫れたり、膝の屈伸の際に痛みやひっかかりが生じることがあります。また、損傷がひどい場合には膝関節を屈曲させた際に、切れた半月板が関節内にはまり込んで、膝が動かなくなる“ロッキング”といった状態になり、歩行が困難になる場合もあります。
 原因としては、スポーツなどの怪我によって発生するものと、中高年者では長年の経過によって変性した半月板が断裂して発生するものがあります。臨床症状と診察でおおよその診断がつきますが、MRI検査が診断に有用です。しかし、軽微な損傷であったり、断裂部が小さかったりするとMRIで分からないこともあります。
 治療は基本的には保存的治療(内服、関節注射、リハビリテーションなど)を行います。
 保存的治療が無効な場合や、断裂部分が縫合可能な場合は手術的治療を行います。
 半月板は切除すると関節軟骨の変性をきたす可能性があるため、最近では半月板をできるだけ温存する考え方が主流です。当科でも可能な限り縫合術を行いますが、断裂の形態によっては縫合術の適応とならず、やむを得ず切除術を行うこともあります。その場合の切除は最小限にとどめます。

疲労骨折

 疲労骨折はスポーツ活動などにより、繰り返しのストレスが一か所に集中することで生じます。それぞれの競技種目によって疲労骨折がおこりやすい骨があります。
 疲労骨折の診断と治療で大切なことは、早期発見と再発防止です。レントゲンでは発症早期には異常がみられないことがほとんどですので、疲労骨折を疑った場合にはMRIを撮影します。MRIではレントゲンでは異常が見られない時期から変化を見ることができるので、疲労骨折の早期発見・早期治療開始が可能となり、結果として早期にスポーツ復帰することができます。
 可能な限り早期にスポーツ復帰できるように治療方針を立てますが、骨折した部位や状態、発症時期によって保存的治療を行うか手術的治療を行うかを判断します。治療の経過で重要なことは再骨折(再発)の予防です。再発を予防するために発症の要因を検討して、オーバートレーニングにならないようにしたり、関節の動きや柔軟性、力学環境の調節などリハビリテーション部と協力して専門的にアプローチします。

   

肩関節障害

 若年者のスポーツ障害・外傷から、中高年の肩関節痛まで、肩の痛みや機能障害の原因となるあらゆる疾患を対象としています。スポーツをしたいが肩の痛みで思うようにプレーができない、長期にわたって肩の痛みが続いているといった方に対して、詳細な問診や診察、各種画像検査の結果をもとに治療を行います。
 治療は最初は内服や関節注射、リハビリテーションといった保存的治療が中心となります。保存的治療の効果がない場合や、手術治療で改善が見込めるような症例は手術治療を行います。

(肩関節の代表疾患)

 【 インピンジメント症候群 】
 症状
 肩を拳上していくとある角度で痛みや引っかかりのため、それ以上は挙上できなくなる症状の総称です。強い症状が長期間持続するとこわばりや筋力低下なども伴い、夜間痛を訴えることもあります。
 原因はさまざまですが、多くの場合は上腕骨と肩峰の間に腱板の一部や肩峰下滑液包などが挟み込まれることで生じます。進行すると腱板が断裂したり、骨が変形したりして痛みがなかなかとれなくなることもあります。
 治療
 投球動作や肩の拳上など痛みがでる動作を避けることが治療の基本です。最初は内服や注射などを行いますが、症状が長期間持続する場合や拘縮が強い場合は、関節鏡視下に炎症を起こした滑液包を掃除して、肩峰の前下面を切除したり、関節包を一部切離したりすることもあります。

 【 腱板断裂 】
 症状
 肩関節を拳上するための腱板という腱が切れてしまった状態です。外傷などが原因で断裂する場合と、加齢とともに自然に擦り切れてしまう場合があります。安静時痛(特に夜間痛)や拳上時痛や拳上困難といった症状を訴えます。腱板は自然修復しないため、徐々に広がっていき機能が低下していくことが多いです。
 五十肩と診断され、長い間治らない患者さんの中に腱板断裂が見逃されていることがあります。
 治療
 中高年は腱板がきれたままでも、内服や注射、リハビリテーションで約7割の方は症状が軽快するといわれています。それでも症状が改善しない場合や若年者の外傷性腱板断裂やスポーツによる断裂には手術治療をおすすめしています。
 手術は関節鏡を用いて行うため、肩関節周囲に約5mm~1cmの切開を数か所加えて骨を削り、断裂した腱板を元の部分に縫着します。縫着した腱板が落ち着くまで、装具を約3~6週間装着します。

   

 腱板断裂の関節鏡手術

 【 反復性肩関節脱臼(くせになった脱臼) 】
 症状
 転倒やスポーツが原因の外傷による肩関節脱臼がきっかけとなり、軽微な外傷で脱臼を繰り返すようになった状態です。ひどくなると、寝返りや洋服を着るといった動作だけで脱臼してしまうこともあります。初回の肩関節脱臼が若いときに生じた場合、反復性脱臼に移行しやすくなります。
 治療
 日常生活に支障をきたすような場合や、完全に治療する場合は手術治療を行います。手術は関節鏡を使って、断裂した関節包や靭帯を縫着して、正常の構造に近くなるように修復します。術後は肩関節装具を約3~4週間装着します。

  

 【 投球障害肩 】
 症状
 肩関節のスポーツ障害は、投球などのオーバーヘッド動作で生じることがほとんどです。一般的にはオーバーユース(使いすぎ)や投球フォームの問題に関連して生じると考えられます。投球は下肢や体幹の回旋から生じるパワーを肩へ伝える全身運動ですので、原因は肩だけではない場合が多く、下肢・体幹・胸郭の柔軟性の低下や、くずれたフォームでの投球により、肩関節に過剰な負荷がかかるようになり、障害が発生するようになります。
 治療
 リハビリによる柔軟性の獲得や投球フォームの矯正で症状が改善することがほとんどです。MRIで上方関節唇損傷などの明らかな所見があり、リハビリで改善しない場合は関節鏡で手術を行います。

     

スポーツ整形外科では、スポーツによる一般的な外傷(捻挫や靭帯断裂、骨折など)からスポーツ障害、肩や膝の慢性の変形性疾患に広く対応し、念入りな診察と検査、十分なインフォームドコンセントを行った上で裁量の治療を行うよう心がけ、切磋琢磨しています。